シャープ株がストップ高で配分、鴻海出資で財務懸念薄まる-東京市場
3月28日(ブルームバーグ):シャープ株がストップ高(値幅制限いっぱいの上昇)。世界最大の受託製造会社である台湾の鴻海精密工業グループが10%弱を出資し、供給先の確保が急務だった液晶パネルも引き受けると27日発表。これに伴い1325億円を調達可能になったとしたことで、財務懸念が一気に薄まった。
28日の取引中は買い注文殺到で値がつかず、前日比75円(15%)高の570円で比例配分された。シャープは鴻海グループへの割当増資で665億円、主力の堺工場の運営会社への出資受け入れで660億円を、それぞれ調達予定。同社はテレビ事業不振などで今期(2012年3月期)に過去最大2900億円の連結純損失に転落の見通しで、堺工場の5割減産も表明していた。
波及効果として、液晶関連の大日本印刷や旭硝子などのほか、シャープが筆頭株主であるパイオニアの株価も急騰。高値警戒感などで3日ぶりに反落した日経平均株価の下げを緩和した形。28日の同株価へのシャープの上昇寄与度は1位。
SMBC日興証券とクレディ・スイス証券はいずれも27日付で、シャープの投資判断を「中立」に引き上げた。シティグループ証券の江沢厚太アナリストは27日付リポートで、鴻海との資本提携で「約1300億円の現金が、時価総額5500億円のシャープに加わる」としている。
メリルリンチ日本証券の片山栄一アナリストは27日付リポートで「これで堺工場の減損リスク650億円がなくなる」と指摘。鴻海側は堺工場からの供給分を「ひっ迫している40型パネルの調達と中国向け60型市場などに振り向ける」との見方を示した。
ゴールドマン・サックス証券の渡辺祟アナリストらも28日付リポートで「増資リスクや堺工場の減損リスクを払しょくさせる内容」とコメント。しかし、中期的には鴻海が60型テレビの受託製造を拡大させれば、シャープが利益確保目的で特化してきた大型テレビの販売に響く可能性があるほか、海外への技術流出懸念もあるとしている。
-取材協力 藤村奈央子
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更新日時: 2012/03/28 15:15 JST