仙台育英高の主力と競り合う川澄(右)。活気あふれる練習試合が展開された。左は宮間 (撮影・山田俊介)【拡大】
冬の寒さが残る杜の都で、佐々木監督が熱のこもった怒号を響かせた。
「おい、逃げてんじゃねえよ!」「何やってんだ、お前ら!!」
28日午後の練習で、明大時代の同期が指揮する宮城県内有数の強豪校、仙台育英高の男子と対戦。体格差などから通常は低学年の控えを呼ぶところを、あえて主力の出場を要請する“奇策”に出た。
なでしこは主力と控えが交互に6~10分、3度ずつ出場。自慢のパス回しでチャンスも作ったが、男子の速さやパワーの前にシュート3本、0-3の完敗に終わった。しかし、これこそ狙い通り。指揮官は「勉強になった。守備の連係、パスの精度が少しでもずれたらやられる。弱点が露出した」と収穫の笑顔だ。
「(米国のエース)ワンバックだって、あれくらいのシュートは打つ」という監督に、DF熊谷は「一瞬のスピードとかは男子ならでは。でも、米国もあれぐらい速い」とキッパリ。体格に勝る米国、個の能力が高いブラジルとの4月の2連戦。両国を仮想した相手との完敗に、選手たちは高い意識を自然と植え付けられていた。
さらに、なでしこ初の強化策も判明した。29日の米国との練習試合を完全非公開とし、試合後の取材もNGに。ウオームアップ後は報道陣を敷地外に出し、スコアと得点者以外の情報をシャットアウトするのだ。
直後の国際Aマッチで対戦する相手との練習試合自体が珍しいが、監督は「理由? (本番の)ステータスを保つため」と冗談を交えつつ、「(練習試合なら)米国の力をいろんな選手が感じられる」と説明。周囲の目、結果への批判を遮断する“ノリオのカーテン”で新戦力や戦術のテストに集中し、五輪での金へ底上げを図る。
女子では異色のパス・サッカーで昨夏のW杯を制したなでしこ。今度は異色の強化策で、次なる栄冠をつかみにいく。 (志田健)
(紙面から)