| ||
(31時間36分前に更新) |
ソウルで開かれていた第2回核安全保障サミットは、核テロ対策と原子力施設の安全性強化に向けて国際協調を深めていくことで合意し、27日閉幕した。
サミットの正式な議題には上らなかったが、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験とみられる「衛星」打ち上げも大きな課題だった。これを中止に追い込もうと、韓国や米国、中国、ロシアの各首脳は積極的な2カ国間外交を展開した。
注目されるのは、北朝鮮の後見人的立場にある中国の意向だ。胡錦濤国家主席は韓国の李明博大統領との会談で、数回にわたって北朝鮮に発射中止を求めたことを明らかにしたという。
ただ、中国は金正恩体制に移行して間もない北朝鮮に強い圧力をかけることには慎重とされ、決定打にはなりそうにない。
遅ればせながら、野田佳彦首相もサミット最終日に出席し、北朝鮮の「衛星」打ち上げ予告に対し「発射を自制することが国際社会の強い要請だ」と述べ、中止を求めた。
しかし本来なら、野田首相も初日から韓国入りし、6カ国協議を構成する各国首脳と2カ国間外交を精力的に展開する中で、直接影響を受ける可能性のある国として最大限の努力をすべきだった。
狭まる包囲網にも、北朝鮮は強行姿勢を崩していない。対外的に技術力を誇示し、国内では新体制の求心力を高め、父子3代にわたる権力世襲を完成させたい思惑があるようだが、むしろ周辺国の反発を買うだけだ。
「衛星」は、予告通りだとロケットの2段目が沖縄の上空を通過する。その際、ロケット本体や部品が落下する可能性は否定できない。県民にとっても北朝鮮の動向に気を配らずにはいられない。
日本領域への落下に備え、田中直紀防衛相は27日、自衛隊に「準備命令」を出した。これを受け自衛隊は地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の沖縄配備と、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)搭載のイージス艦を展開する作業に着手した。
PAC3の配備先は、石垣島、宮古島、沖縄本島の南城市などが想定されている。
石垣市議会は同日、早急に配備するよう求める決議を賛成多数で可決した。
仲井真弘多知事はこの日開いた危機管理対策本部会議のあと記者団に「政府の対応をフォローできるようにしておきたい」と述べ、配備に前向きな考えを示した。
PAC3配備先の首長や議会には歓迎、ないし容認する空気が広がっている。その半面、懸念もぬぐえない。
日本のミサイル防衛システムには、その精度に疑問符がついている。
今回の問題を、PAC3の沖縄常設や先島への自衛隊配備、部隊や装備増強の根拠にしてはならない。イージス艦まで展開すれば、沖縄周辺の軍事的緊張を高める。
そのような事態を回避するためにも米中ロ、そして日韓は国際的包囲網を狭め北朝鮮に打ち上げを自制させる外交努力に全力を挙げるべきだ。