野田政権は28日、首相官邸で政府・民主三役会議を開き、消費税率を14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる消費増税法案を30日に閣議決定して国会に提出することを決めた。しかし、小沢一郎元代表のグループを中心とする反対派は国会採決での「造反」をちらつかせ、採決阻止を狙う構え。今国会成立に「政治生命を懸ける」と表明している野田佳彦首相は自民党の協力に期待するが、同党は法案成立前の衆院解散・総選挙を求めており、4月以降の後半国会は消費増税をめぐる与野党の駆け引きで緊迫する展開となる。
民主党執行部は27日夜、社会保障と税の一体改革調査会などの合同会議で、景気悪化時に増税を停止する「弾力条項」に「名目成長率3%、実質成長率2%」の数値目標を盛り込み、15年10月以降の「追加増税条項」も全文を削除する修正案を提示。ここまで譲歩を重ねたのは、衆院の法案採決で民主党内から50人超が造反すれば否決されるためだ。
それでも会議は28日未明の議論打ち切りで紛糾し、反対派が「一任」拒否を宣言した。小沢グループの若手議員は「作戦通り。一任で終わったら採決のときに反対しづらい」と語り、法案採決時に造反する口実を確保するのが本当の狙いだったことを明かした。
小沢グループは6月21日に会期末を迎える通常国会での法案採決を阻止し、9月の民主党代表選で「野田降ろし」を仕掛ける戦略を描く。小沢元代表は28日、衆院議員会館の事務所に側近議員9人を集め、「こんなことをやると野田首相はもたなくなる」と「倒閣」に動く意向を示唆。側近議員も「そもそも採決までいけないだろう」とけん制する。
党分裂を避けたい輿石東幹事長や樽床伸二幹事長代行も解散に慎重。輿石氏は28日午後、反対派の川内博史衆院議員、中間派の馬淵澄夫元国土交通相らを呼び、提出後の譲歩も示唆して理解を求めた。執行部は造反を最小限に抑えられるよう審議入りの時期を慎重に探るとみられ、審議入りは4月中旬以降にずれ込む可能性もある。
法案成立が見通せない中、首相は強気の姿勢を崩さない。小沢グループは法案採決時に反対できないとの読みがあるからだ。選挙基盤の弱い若手議員が大半を占める小沢グループにとって、最も避けたいのは消費増税を争点に衆院解散・総選挙に突入すること。首相側近は「民主党内の造反が理由で法案が否決されれば、内閣不信任案が可決されたことと同じ意味だ」と首相が解散に踏み切る可能性を示唆する。
衆院可決にこぎ着けても、野党が過半数を握る参院が待ち構える。首相は周辺に「参院で通らないと意味がない」と語り、衆院採決前の段階で野党の協力を取りつける構想を描く。秋波を送る相手が10年参院選公約に「消費税10%」を掲げた自民党の谷垣禎一総裁。2月25日の極秘会談は平行線に終わったが、法案提出後、正式に党首会談を呼びかけることも検討している。
自民党の石原伸晃幹事長は28日、「社会保障改革の全体像も示されない単なる増税法案」と批判。同党は民主党が具体化を先送りしている最低保障年金制度の撤回を求めるとともに、田中直紀防衛相の問責決議案提出も検討し、今国会で解散に追い込む方針だ。
ただ、消費増税に正面から反対はしにくく、いずれ法案採決で賛否を問われる。最低保障年金の撤回要求には、法案成立に協力する代わりに解散の確約を取り付ける「話し合い解散」の誘い水という側面もあり、自民党幹部は「撤回してくれれば法案に賛成しやすい」と漏らす。【犬飼直幸、田中成之】
毎日新聞 2012年3月28日 23時52分(最終更新 3月29日 2時39分)
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