西海市で昨年12月に起きた2女性殺人事件で、ストーカー被害の相談があったにもかかわらず「救える命を救えなかった」警察組織の危機意識の欠如、各県警間の連携不備が問題になった。長崎県警は事件後、ストーカー被害や相談の洗い直しに積極的に乗り出そうとしている。が、これまで事件が起きる度に繰り返し叫ばれてきた「再発防止」。悲劇を繰り返さないためには、警察だけではなく地域、民間との連携も必要ではないだろうか。【梅田啓祐】
日本初のストーカー対策NPO法人「ヒューマニティ」(東京)の小早川明子カウンセラーは「歯がゆくて仕方がない」と西海市の事件を振り返る。「相談してきた被害者に『人手不足』と伝えて追い返すくらいなら、なぜ警察は民間支援団体を紹介しなかったのか。もっと民間団体を活用し、連携を深めるべきだ」と訴える。
ストーカーと同じ男女間のトラブル、DV(ドメスティックバイオレンス)については、市町の相談支援センターなど被害者にとって心理的に敷居が低く、相談しやすい組織が各地にある。が、ストーカー被害については、制度的な行政窓口はなく、民間支援団体も少ないことから「警察が最初で最後の頼み」(小早川さん)となっているのが実態だ。
県警によると、11年の県内ストーカー事案の認知件数は104件(前年120件)。DVの11年の認知件数222件と比べても、それほど少なくはない。
民間団体「DV防止ながさき」(長崎市)は「女性ほっとラインながさき」を開設。電話で夫婦や恋人間のトラブルの相談を受けている。27日には、県北地区でも「女性ほっとラインさせぼ」をスタートさせる。団体名は「DV防止」が前面に出ているが、担当者は「デートDVからストーカー事件に発展する可能性もあり、不安や悩みがある時はいつでも相談してほしい」と話す。
また、小早川さんは法整備の必要性も指摘する。DV防止法では、被害者の申し立てにより裁判所が保護命令を出し、強制的に加害者を遠ざけることができる。一方、ストーカー規制法では警告や禁止命令の主体は警察と公安委員会。ストーカー行為の要件にある「反復行為」の認定は難しく、警察も慎重な対応を迫られる。今回の事件でも、千葉県警は「認定するまでには至らなかった」ことを反省した。小早川さんは「ストーカー行為についても、すぐに裁判所が警告や禁止命令を出せるように法改正すべきだ」と話す。
恋愛感情や好意が満たされなかった異性への恨みなど男女間のトラブルだけに、デリケートで警察署に駆け込みにくいケースもある。行政、民間支援団体などと積極的に情報・意見交換し、相談窓口を紹介するなど、真の再発防止に努めてほしい。
「女性ほっとラインながさき」は095・832・8484(月・水曜の午後1~5時、午後7~9時と、土曜の午後1~5時)。
毎日新聞 2012年3月26日 地方版
4月1日北リアス線田野畑~陸中野田間復旧
岩手県・宮城県に残る災害廃棄物の現状とそこで暮らす人々のいまを伝える写真展を開催中。