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本土からの妊婦の話からガンバレ日本へ  3/27更新

かなり前から、そして今は香港の議会でも問題になっているのが、中国本土から香港に来る妊婦のこと。香港への殺到で、地元の妊婦が十分な治療を受けられないのが第一の問題。人口700万人の一都市に、人口12億の全土から押し寄せたら無理なのは明らか。第二の問題は香港で生まれた赤ちゃんは香港人と見なされるので、香港が本土の人だらけになってしまうのは困るという香港人の感覚。教養もマナーもない本土の人達に自分達の生活を乱されたくない、と思っている香港人も多いのは事実。本土政府にとっても国を捨てて出てゆく人にニコニコしてはいられない。
 
  子供のためと、良い学校がある学区に引越をする親はいても、○○県生まれでないと子供が苦労するからと、出産する地域を選ぶ親は日本にはいないと思う。これは日本のどこで生まれようが、日本国民としての扱いは同じだから。
 
  ところが香港人か本土の人かでは、人間としての権利や義務が全然違う。本土の人は、香港の人のように外国に出掛ける自由がないだけでなく、国内での移動や転居だって自由にはいかない。共産党の一党独裁なので、時の指導者の気持ち一つで逮捕されたり、投獄されたりの危険もある。生活レベルも格段に違う。もうそれだけでも、本土の人が香港人になるメリットは充分。本土籍の親が香港籍になるのは無理でも、香港で出産した赤ん坊が香港籍となれば、その保護者である母親も香港籍に、そしてその家族もいつかはとの可能性を期待する。子を思う親の気持ちと言うより、親とその一族郎党の将来のメリットのために、妊娠した女性を自分らの代表として皆で融通し合ったお金を持たせて香港に送り込むという感じか。
 
  そして、この第二のポイントが香港の議会で問題になったり、北京の全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)で討議されたりする理由である。香港政府にとって、また本土政府にとっても問題なので、香港への本土女性の入国では入国審査の時にお腹が大きいかどうかをチェックしたり、香港の病院を予約した書類を持っていない妊婦の診察を断るとか、色々な工夫をしているようだ。が、すり抜けて入ってきた妊婦が香港内で陣痛となれば、無視する訳にも行かず、誕生となればその子は法律的に香港人となってしまうので、問題は簡単ではない。
 
  日本のことはよく分からないが、こんな話題が出ないということは、日本で生まれたという事だけで、その子が日本人になれるシステムではないのだろう。
 
  その子が生まれたところが、その国籍になる香港式と、必ずしもそうはならない日本式のどちらが世界のメジャーなのか私は知らないが、その出生自体は祝福されても、その子がその国籍になってしまうのを、その国の国民である両親やまわりの人が歓迎できない、残念、と思う人達がいるのが中国だ。
 
  こう書くと、中国はやっぱりな、と日本人は思ったりもするが、ビジネスの世界から見ると、香港と日本の関係は、妊婦の問題における香港と中国の関係と似たところがあると言える。
 
  今、消費税の増税でゆれる日本は法人税を始め、あらゆる税金が香港より高い。会社設立には大量の書類を準備し、手間と時間を掛ける必要がある。それに多くの役所の許認可と規制をクリアしなければならない。これに対して、香港は会社を作る手間や費用もはるかに少なく、設立した後も法人税等の税金や公共料金も少なくて済み、社会インフラの整備も進んでいる。世界的な評価でもビジネス環境としてのランクは日本よりはるかに上位にある(注1)。
 
  ビジネスを新たに始めるなら日本より香港、とは多くに人が知るところだが、街の八百屋さんや魚屋さんがそれでは香港とはいかないように、日本の多くの企業にとっては、香港が有利だからと香港の会社にはなれない。ごく一部の、土地に縛られないIT企業とか、ある程度以上のサイズの会社が、本社を香港に移す等の形で香港のメリットを生かしているに過ぎない。中国本土の人の大半が本土で出産、本土の人としての暮らす事を選択する一方、ごく一部の人だけが香港での出産、子供の香港人化によるメリットを選択しているのと、同じようだとも言える。
 
  香港との比較において中国本土が「抑圧された、不自由な暮らしをする人民」ならば、日本の現状は「重税と規制、決まらない政治に不自由な暮らしをする人民」となってしまう。
 
  妊婦の話が、変な方向に行ってしまいましたが、今回の震災で色々な見直しが行われ、制度が改革されて、「日本はどうして….」と人々が思う国から「日本が最高!」と思える国になって欲しいと思います。「ガンバレ日本。香港に負けるな」です。
 
  関 俊也著
 
  注1:色々な集計がありますが、最近のものでは、3月21日にブルームバーグが発表した「ビジネスに最適な国・地域は香港」がある。ちなみに日本は7位。

本 名 関俊也 (SokNet Planning Ltd.代表)
E-mail seki-s@soknet.com.hk
略 歴 昭和19年生、獅子座。東京理科大学理学部物理科卒。卒業後、折からの学園紛争で学士入 学するはずの大学がその年に限り学士入学を取らず、研究室でブラブラしているときにお もしろそうだと訪問したのが、コンピューター(その当時はリレー式コンピュータ)で日 本語を処理しているという会社。いつのまにか入社。1979年、同社香港オフィス創立で 香港に赴任、1992年に同社を退職。趣味で始めたパソコンに関するコンサルタントとして 香港に残り自営。1994年後半、会長をしていた香港日本人倶楽部パソコン研究会がインタ ーネットで大いに盛り上がり、1995年にその友人達とインターネットプロバイダーを設立、 その後、インターネットコンテンツを専門に扱う会社、SokNet Planning Ltd.を設立して 現在にいたる。
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