東京電力福島第1原子力発電所の大事故から1年を迎える3月8日、初めて現地を視察した福島県の佐藤雄平知事に同行し、厳しい事故処理の一端を垣間見た。
11時43分。原発から約20キロの位置で前線基地となっているサッカー施設、Jヴィレッジ(福島県楢葉町など)をバスで出発した。「ただいまの線量は(毎時)2.5マイクロシーベルトです」と東電の担当者がアナウンスする。警戒区域内は人けのない家々、草が伸び放題の田畑が広がる。点在する金融機関やコンビニエンスストア、家電量販店などはすべて閉鎖されている。楢葉町から富岡町へと北上する。異様な静けさが悲しい。
12時4分。「間もなく(第1原発のある)大熊町です。9.5マイクロシーベルトです」。どんどん線量が上がる。
12時13分。原発の入り口では車中で25マイクロシーベルト、敷地内の作業拠点である免震重要棟の屋外では40マイクロシーベルトに達した。
原発には作業員向けの電子式個人線量計が約4900台ある。貸出数は平日でおおよそ2000台、Jヴィレッジと合わせると3000~3500台という。つまり1日3000~3500人の作業員が働いているのだ。
現場の幹部ら百数十人が集う緊急時対策室の壁には応援の垂れ幕がかかっていた。「私たちのために体をはってくれてありがとうございます」と書いたのは隣県、栃木の作新学院中等部の生徒。国際原子力機関(IAEA)などからの寄せ書きもある。「従業員の皆さんはこの1年、身を賭して頑張っている」と佐藤知事も激励。高橋毅所長は「(避難している)地元の人が一日も早く戻れるように安全第一に仕事を進めていきたい」と神妙な面持ちで応じた。
しかし原発の完全な安定、廃炉への道のりは長く険しい。爆発で崩れた3号機や4号機の無残な姿、その周辺に散乱するがれきを見ると、状況の難しさを改めて思い知らされる。
北から1~4号機の順に並ぶ建屋の南、約340メートル離れた高台でバスを降りると80マイクロシーベルト。そこから海沿いに回り、各建屋の脇を走り抜けた。14時39分、4号機のところで車中の線量は180マイクロシーベルト。3号機にさしかかると一気に跳ね上がった。「1000です」。さらに間髪入れずに「1500」と大声が響く。2号機まで来ると200マイクロシーベルト。14時41分、1号機を通り過ぎる際は120マイクロシーベルトだった。
Jヴィレッジに戻ったのが15時13分。貸与された計器を確かめると、3時間半の積算線量は40マイクロシーベルトだった。普段、取材しているいわき市での1カ月分に近い線量だ。全面マスクや防護服を脱ぐと、びっしょりと汗をかいていたことに気が付いた。ただ遠巻きに眺めるだけだったのにもかかわらずだ。さらに長時間、体を動かす作業員の心身の疲労は計り知れない。
視察終了後、佐藤知事は「すさまじい状況を目の当たりにした」と繰り返した。4号機からの核燃料の取り出しなど本格的な作業はこれから始まる。一方で東電の経営問題、原発周辺自治体の帰還の是非などを巡り、今後も様々な政治的議論があるだろう。それでも現場で懸命に働く人たちこそが福島の復興を支えていることは変わらない。(舘野真治)
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