僕は洋服のお直しというサービスを提供している会社を経営しています。縫製技術という目に見えるものも大切ですが、接客応対という目に見えないものが売り上げに与える影響はかなりのものです。そして接客応対はつねに悩まされる永遠の課題だと思います。
以前より接客に力を入れよう、接客応対のレベルをあげようと、さまざまな勉強をしました。色々なセミナーにも参加、ディズニー本国からインストラクターが来て英語で行う研修にも参加しました。もちろん本も沢山読みました。ディズニーものはほとんど読みましたし、リッツカールトンの本も読みました。
リッツカールトンのサービスの真髄は泊らないと分からないと思い、日本はもとよりパリまで泊りに行きました。各種、研修会社のプログラムにも参加、沢山のお金と時間を費やしてきました。
だからこそ、今思うのです。中小企業のサービスはリッツカールトンやディズニーランドのまねをしてはいけないと。サービス業でお客様に感動を与えるのは、お客様の期待値と実際に提供されるサービスの間にギャップがあり、このギャップが良い方に外れると心が揺れ、「感動」が起こるのだと思うのです。
だから、まず大切なことはお客様がその業種、そのサービスに求めている期待値を想像して、決めてしまうことだと思うのです。目指すのは、それをちょっとだけ超えるサービスです。大幅に上回る必要はないのです。ちょっとの好印象を残せる言動を、全社員で徹底して実行することが大事です。
僕はお洋服をお預かりして、お客様をお見送りする時、最後に「大切にお預かりさせて頂きます」と言うように指導してます。この一言で、時にお客様は振り向き、ほほ笑むこともしばしばです。他と違うのは「大切に」の一言だけ。これだけでお客様の期待値をちょっとだけ超えることができます。
僕たちはこれで十分なのだと思います。ただ、これでさえ、全社員で徹底するのは難しいのです。接客についてはロールプレイングコンテストのように、芸術の域まで達する「高み」を目指すものがありますが、冷静になって考えれば、そんなものへの挑戦はコストアップと社員のストレス増加以外の何物でもありません。
中小企業には身の丈に合わない、過大な目標だと思います。お客様の期待を、少しだけいい方に裏切るサービスを、社員全員が貫ける「徹底力」こそ、中小企業には必要であり、それこそが業績を安定させるものだと信じています。
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