野田首相:福島原発事故の教訓を演説へ 核安保サミットで

2012年3月27日 7時8分

 【ソウル笈田直樹】野田佳彦首相は27日、ソウルで行われている第2回核安全保障サミットに参加し、東京電力福島第1原発事故を教訓とした原発の安全強化などについて演説する。首相は「原子力施設の脆弱(ぜいじゃく)性を克服する」と訴えるとともに「事故で得た知見や教訓は、原子力施設へのテロリストによる攻撃などの『人為的な危害』への備えにも生かしていかなければならない」と、原発テロ対策に備える考えも強調する。

 首相は国内での取り組みとして(1)全電源喪失を想定した電源装置の増強(2)高い放射線量のもとで事故収束への即応行動を可能とする放射線防護車など装備の充実(3)警察と陸上自衛隊、海上保安庁と海上自衛隊の共同実動訓練実施--などを説明する。

 さらに「三つの教訓」として(1)想定外を想定する(2)現場をおろそかにしない(3)安全確保は不断の取り組み--を指摘。「我が国は安全神話にとらわれ、電源が失われた場合に電源車を配備するといった当然の答えを用意できなかった」「絶対的な安全などあり得ない」と訴え、知見と教訓を将来に語り継ぐことが「歴史に対する責任」だと訴える。

 首相は26日夜、政府専用機でソウルに到着した。

 ●第2回核安全保障サミットでの野田佳彦首相の演説要旨

 (東京電力福島第1原発)事故は自然災害に起因したが、得られた知見や教訓は原子力施設へのテロリストによる攻撃など「人為的な危害」への備えにも生かさねばならない。

 ▽国内的取り組み

 全電源喪失を十分に想定していなかった。電源装置を増強し、電源の脆弱(ぜいじゃく)性を補強する。高放射線量下でも即応行動を可能にするため、放射線防護車、防護服などの装備を充実。現場での異なる組織間の連携が欠かせない。警察と陸自、海保と海自の共同実働訓練を実施する。

 ▽対テロ特有のセキュリティー対策

 武装治安要員を増強し巡視態勢も強化。原子力施設の防護本部を二重化する。原子力施設のコンピューターシステムを外部ネットワークから遮断した。

 ▽国際的取り組み

 イランや北朝鮮の核開発は憂慮せざるを得ない事態。(北朝鮮が予告した「人工衛星」発射は)国連安保理決議違反で、発射の自制が国際社会の強い要請だ。兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉参加を呼びかける。

 ●サミット昼食会での首相演説要旨

 ▽三つの教訓

 「想定外を想定する」。福島第1原発で想定した津波の高さは5メートルあまり。実際には15メートルを超えた。非常用の電源やポンプが水没する場所に設置された不備、過酷事故を想定した準備の不足、住民避難に関する混乱も、甘い想定にとらわれていたことに起因する。

 「現場をおろそかにしてはならない」。電源車を確保しても道路が寸断され現場にたどり着けず、現場に着いても電源プラグの形状が異なり接続できず、高放射線量に阻まれてベントを手動で操作することができなかったなどの現場レベルの不具合が次々と生じた。実地訓練していれば、事故対応はより円滑に進められた。

 「安全確保は不断の取り組み」。絶対的な安全はあり得ず、安全確保の取り組みに決して終わりはない。そのことを核セキュリティーに取り組む全ての関係者は心に刻まなければならない。

 相手が自然災害であれテロ攻撃であれ、人間の「知恵」が問われていることに変わりはない。自然の脅威を侮らず、テロリストとの「知恵比べ」に負けないよう、各国との協力を密にし、英知を結集して立ち向かわなければならない。最大の敵は記憶の風化。知見と教訓を将来に語り継ぐことは、指導者の「歴史に対する責任」だ。

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