陸上自衛隊がイラク派遣反対運動の参加者を監視して個人情報を集めたのは違法だとして、東北6県の107人が情報収集の差し止めと1億円超の損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁(畑一郎裁判長)は26日、原告5人に計30万円を支払うよう国に命じる判決を言い渡した。「情報収集は人格権を侵害し、違法」と判断した。
原告側によると、自衛隊による情報収集の違法性を指摘した判決は初めて。
判決はまず、陸自の情報機関である情報保全隊が2002年12月〜04年1月、107人のうち共産党市議ら5人について、活動に参加していた事実だけではなく、氏名や職業、所属政党など思想信条に直結する個人情報まで集めていたとの事実関係を認定した。
そのうえで「自分の個人情報を収集、保有されないようにコントロールする権利は、法的に保護に値する利益として確立している」と指摘。情報保全隊の情報収集によって5人が「個人情報をコントロールする利益、すなわち人格権を侵害されたといえる」とした。
一方で、個人が甘んじて受け入れるべき行政上の目的や必要性がある場合には情報収集が違法にはならない可能性にも言及。ただ、国が目的や必要性について具体的な主張をしなかったことから「違法とみるほかない」と述べ、人格権を侵したと結論づけた。