2010年3月、長野市真島町の自営業金文夫さん=当時(62)=ら一家3人を殺害し、現金を奪ったなどとして長野地裁の裁判員裁判で死刑判決を受けた水道設備工松原智浩被告(41)の控訴審判決は22日、東京高裁で言い渡される。裁判員裁判で死刑が言い渡された被告に対する控訴審判決は全国で初めて。市民から選任された裁判員が参加して導き出した極刑の判断を、高裁の職業裁判官がどう判断するかが注目される。
この事件では、4被告が強盗殺人、死体遺棄の罪で起訴され、殺害を実行した松原被告ら3人が長野地裁で死刑判決=全員控訴=を受けた。殺害実行に加わらなかった1人は今月15日に無期懲役を求刑されている。松原被告の弁護人は控訴審で量刑不当として死刑回避を訴え、検察側は控訴棄却を求めている。同被告の控訴審判決は一審で死刑判決を受けた他の2被告の控訴審にも影響を与えそうだ。
松原被告の一審判決は、同被告が早くから殺害計画に関与して重要な役割を占め、金さんらから奪った現金の分け前を得ており、利欲目的があったと認定した。同被告は昨年8月から5回開いた控訴審の審理で「犯行は行き当たりばったりで絵空事のようだった」と計画性を否認。犯行は金さんらの束縛からの解放が目的で、強盗の意思は乏しかったとあらためて主張した。
弁護側は金さんらから日常的に暴力を受けていたとして「特殊な状況下で起きた事件。被害者側の落ち度も考慮すべきだ」と主張。殺害実行は、同被告と同様に一家と同居していた伊藤和史被告(33)が主導し、松原被告は従属的だったと訴えた。
県外の事件では、裁判員裁判で導き出された判決が高裁で支持されなかったり、高裁で支持されなかったものの最高裁が逆転で支持したりする事例が出ている。
福岡高裁は昨年11月、福岡地裁の裁判員裁判で現住建造物等放火などの罪で懲役4年の判決を受けた女性に対し、「濃厚な嫌疑は否定できないが、犯人と認定するにはさらに慎重な検討が必要」として無罪を言い渡した。
覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の事件で最高裁は2月、一審・千葉地裁の裁判員裁判で無罪とされた男性を有罪とした東京高裁判決を破棄し、裁判員裁判の判決を支持した。