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指宿の夫婦殺害:無期懲役判決 極刑判断「つらかった」 裁判員が胸の内語る /鹿児島

 強盗殺人罪が成立するか否かが問われた指宿市の夫妻殺害事件。19日、鹿児島地裁の裁判員裁判が下した判決は「突発的に殺意が生じた」と認定し、強盗殺人罪ではなく殺人罪を選択し、川下誠被告(45)に無期懲役を言い渡した。判決後、裁判員6人と補充裁判員1人が記者会見に応じ、「つらかった」と死刑が求刑された重大事件を審理する苦しい胸の内を明かした。

 裁判員の40代女性は「(死刑という)人の命に関わることを審理し、感情が爆発しそうになった」と明かした。また法廷で遺族が涙を流しながら極刑を求めたことを振り返り、50代女性は「(考えるのが)一番つらかった」と評議を進める中で最も悩んだことを振り返った。

 強盗罪か否かの法律解釈を巡る争いについて、40代女性は「法律用語などわからないことはあった」と公判の内容に難しい部分があったことは認めつつも「(法律を知らなくても)恥をかくことはないので、評議の中で裁判官に一生懸命質問した」と振り返った。また20代男性は「法廷で見たことだけを冷静に、感情的にならずに評議に臨んだ」と話した。【黒澤敬太郎、村尾哲、垂水友里香】

 ◇被告、伏し目がちに判決読み上げ聞く

 「主文、被告人を無期懲役に処する」

 鹿児島地裁206号法廷。中牟田博章裁判長が告げると、ワイシャツ姿の川下被告は黙って前を見つめた。着席を促されると、伏し目がちに判決の読み上げを聞いていた。

 傍聴席と検察席後方では、10人以上の遺族が判決を聞いた。主文が言い渡されると、ハンカチで顔をおおう姿や、目をつむってうつむく姿が見られた。

 判決言い渡しの後、中牟田裁判長は裁判員の言葉として、被告に「遺族の悲しみはあまりにも大きい。遺族の言葉を受けとめながら、残された日々で、命ある限り償う努力を続けてほしい」と伝えた。川下被告はわずかにうなずき、遺族に向かって深々と頭を下げ、法廷を後にした。

 ◇納得できない 控訴強く希望--遺族

 中村さん夫妻の遺族は「予想しなかった判決でとうてい納得できない。判決で打ちのめされた思い。犯罪動機に酌量すべき点はない、としながらも無期懲役の結論を導くなど、全く理解できない」との談話を弁護士を通じて発表。検察官側の控訴を強く希望した。

 ◇自白調書信用性に疑問

 川下誠被告に無期懲役を言い渡した今回の判決は、被告の自白調書の信用性に疑問を呈した。

 地検は、強盗目的を認める内容の供述調書を読み聞かせ、被告が「不満はありません」と応じる場面を録画し、証拠として提出したが、弁護側は「全面録画ではなく、誘導されている」と反論。結局、判決も弁護側主張を採用した。

 弁護側は判決後の会見で「録画は調書完成後にとられたものにすぎない」と述べ、取り調べの全面可視化の必要性を強調した。

 一方、地検の今村智仁次席検事は「川下被告の取り調べ当時に、全面録画の事例は全国的にほとんどないわけで、意図的に全面録画しなかったわけではない」と話した。

 最高検によると、郵便不正事件の大阪特捜部によるずさんな捜査が批判を受け、昨年8月から裁判員裁判対象事件について、供述段階からの録音・録画を試行。それまでは、調書の読み聞かせ場面など、部分的な録音・録画に限っていた。

毎日新聞 2012年3月20日 地方版

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