自衛隊のイラク派遣反対の街頭活動に対する陸上自衛隊情報保全隊の情報収集を巡る訴訟で、26日の仙台地裁判決(畑一郎裁判長)は「街頭活動からは必ずしも明らかではない氏名、職業、所属政党に関する個人情報が(自衛隊の)内部文書に含まれる」と指摘した。監視自体を違法とは断じていないが、その後の情報収集を理由に30万円の賠償を国に命じた。
情報保全隊の監視を巡る初の判決。行政機関保有個人情報保護法に照らして違法と判断しており、自衛隊に限らず行政機関全体の個人情報収集の在り方に一石を投じそうだ。
判決は、同法の制定(03年)により「正当な目的や必要性がなければ(行政機関に国民は)個人情報を収集・保有されないという法的利益が確立した」との判断を示し、自分の個人情報をコントロールする権利(人格権)と位置付けた。
その上で原告のうち5人について▽街頭活動の状況を情報保全隊がまとめた内部文書で、氏名や「日本共産党の市議」「社会福祉協議会職員」などの肩書も記載▽国側は情報収集の目的・必要性を具体的に主張していない--として「保全隊の情報収集は人格権を侵害し違法」と結論付けた。
国側は訴訟で、内部文書ではないと主張、保全隊の組織規範などを基に「適法な情報収集」と争った。だが判決は、内容や体裁などから内部文書と認定、組織規範も「収集の目的・必要性を積極的に基礎づけるものではない」と退けた。
計約1億円の国家賠償などを求めていたのは、02~04年に街頭活動をした東北6県の住民107人。うち5人について1人当たり5万~10万円の賠償を判決は認めた。
一方で、残り102人については内部文書に氏名などの記載がないことから請求を棄却。原告側は監視差し止めも求めたが「請求内容が特定されておらず不適法」として訴えを却下した。これらを不服として原告側は控訴する方針。【竹田直人】
活動内容が今回問われた自衛隊の情報保全隊は、他国の情報機関や反体制派に隊員が取り込まれ、機密が流出することなどを防ぐための情報収集に当たる。
ロシア大使館駐在武官に情報を流出させた海上自衛官が00年に逮捕されたのを機に、03年に陸海空自それぞれに発足、09年に防衛相直轄の現組織に統合された。体制は約1000人。
防衛省は「関係法令に基づきインターネットや刊行物、公開の場などからの情報収集活動をしている」と説明するが、防衛省・自衛隊内でも詳しい活動内容を知る人は限られている。
今回の訴訟でも、防衛省は情報収集の関心事や手段、能力が推察されることなどから、判決が「内部文書」と認定した文書についても、保全隊が作成したものかどうかは明らかにしていない。今回の判決に対し、防衛省は「判決内容を慎重に検討し、関係機関と調整の上、適切に対処していきたい」とのコメントを出した。【鈴木泰広】
毎日新聞 2012年3月27日 0時57分
4月1日北リアス線田野畑~陸中野田間復旧
岩手県・宮城県に残る災害廃棄物の現状とそこで暮らす人々のいまを伝える写真展を開催中。