東日本大震災による東北地方の高速道路無料措置が、3月末で原則終了する。東京電力福島第1原発事故の警戒区域などからの避難者は、無料措置が9月末まで延長されたが、区域外の自主避難者らは対象外。自主避難では母子だけが県外に避難し、福島に残る父親が高速道路を使って会いに来るケースが少なくない。「二重生活」による経済的負担がさらに重くなるため、無料措置の延長を求める声が上がっている。【小林多美子】
福島県郡山市の菅野正志さん(37)は昨年8月、新潟市に妻(36)と8歳と2歳の娘2人を避難させた。以来、金曜の夜に新潟市へ車を走らせ、日曜の夜に郡山市に戻る生活を続ける。離ればなれの寂しさを埋めるように、土日は水族館やイベントなどに出かける。25日の日曜の夜、一家4人で夕食を囲んだ後、アパートの玄関を出ようとする菅野さんに娘たちは「パパ、抱っこ」と甘えた。
郡山-新潟の高速料金は往復約7000円。菅野さんは「娘に会うためにも無料措置が必要」と訴える。措置が終了しても「娘に会う回数を減らすなんて考えられない」と語り、高速料金は「裁判外紛争解決手続き(ADR)」で東電に請求するつもり、という。
一方、福島県いわき市から4歳と1歳の娘と新潟市に避難している30代の母親は「あまりに家計が厳しくなれば、パパに『来なくていいよ』と言ってしまうかも」と嘆く。夫はサービス業の管理職で忙しく、会いに来られるのは月2回程度。一家だんらんのささやかな楽しみが奪われようとしている。
いわき市から新潟市の高速料金は往復約1万円。月3万~4万円かかるガソリン代も高騰し、家計にのしかかる。貯金を取り崩して暮らしているが、定期預金以外で生活費に充てている預金は20万円を切った。
東京を中心に被災者支援を続ける弁護士らのボランティア団体「とすねっと」(森川清代表)は、27日に国土交通相に無料措置の延長を求めて要望書を提出する予定だ。森川代表は「父親と子どもが離れて暮らす異常な状態を作ったのは、国と東電。無料の継続は必要だ」と訴える。
毎日新聞 2012年3月26日 21時23分
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