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小学生編(前期)
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η月τ日

 8月に突入した今日は実にすばらしい1日だった。俺の怪我もかなり回復したので医者が風呂に入るのを正式に許可してくれたのだ。ようやく汗だく地獄から解放される……。実技の訓練の様に激しい運動は傷が開くからまだダメなようだが、取りあえずは肩に腕を吊るさなくても良いらしい。
 試しに左手を動かしてみたら、ずっと同じ形で固定していたせいなのか筋肉が硬くなっていた上に左肩の凝りまで酷くなっていた。まぁ、帰ってから士郎さんに相談して、無理が出ない程度にリハビリすることにはなった。だが体力を取り戻す時みたいに苦労はしないだろう。ただし、鈍った感を取り戻す時は今回のリハビリに反比例して苦労しそうだがな。

 後になって大変になる話は置いといて、楽しい夏休みの計画を書いていこう。夏休みの宿題は既に終了済みなので去年と同じく遊び放題の夏休みになるだろう。小学生低学年の自由研究がない夏休みの宿題様様だ。
 予定は当麻の来訪に夏祭りに肝試しにetc.etc.で毎日遊び呆けてやるぜ!! とか夏休みの前は思っていたんですが、そうは問屋が下ろさなかったりします。ぶっちゃけ怪我をしたのでプールにイケないとかもあるんだが、夏休み終了時点までに物体の空間転送の転路呪語コードを作らないければ、父さんと母さんと士郎さんとマスターの4人がかりで訓練すると……、早い話が父さんに死刑宣告されたんだぜ!!
 訳が分からずポカンとしていたら父さんから補足事項が入り、この前の誘拐で現代兵器などの銃刀法に違反する代物が持ち運びできずに襲撃の役に立たなかったので、もしも現代兵器系が役に立つような状況を作れないようなら成長の早い内に早急な肉弾格闘専門の方への路線変更をした方が良いので期限を設けたらしい。ちなみに父さん以外の師匠2人は既に納得済みらしく、父さんとしては現代魔術師としての腕前の確認の意味を込めてもこんなスパルタな内容にしたらしい。
 死ぬ……、間違いなく人外匠3人+母さんと訓練だなんて俺の命が消し飛んで幽霊ちゃんのお仲間入りになってしまう。ちなみにこの鬼畜訓練は俺が期限以内に出来なかった最初の訓練の時のみで、分かりやすく言えばお仕置きも兼ねているようです、本当にありがとうございます。ただ、父さんとしても現代兵器は組み合わせ次第ではかなり応用が利くので俺に教わらせておきたくもあるので、俺のやる気を上げるために鬼畜訓練を設けたとのこと。死ね、クソ親父め……、そう思うならもっと期限を伸ばしやがれ!! そもそも路線変更なんか考えるな!!



η月α日

 マジで死に晒せぇ……、クソ親父……!! 3日かけて物体の空間転送の転路呪語を《コード》を完成させて父さんに報告した。そして目の前で空間の転送を実践して見せたらかなり驚かれた。そりゃ、父さんも現代魔術師なら驚くだろうな。なんてたって空間に現れる魔法陣を光学迷彩で視認できないようにした上で、階差導機サーバーから上位階層世界ノウアスフィアにアクセスするだけで現れるようにした……、ようは詠唱破棄して不意打ちで現れるようにしたのだ。
 ただし、俺の作った物体の空間転送の転路呪語コードは光学迷彩と詠唱破棄が出来る代わりに単純な空間転移しか行えない。具体的には物体と同じ刻印めじるしを刻んだところにしか飛べないため、応用性がないという欠点が存在する。
 空間を指定するタイプの転路呪語コードも作ったが、魔法陣の光学迷彩に思いのほか魔力を喰われてしまうので、単純な空間転移にして少しでも魔力を喰われないようにしておかないと魔力が枯渇して銃弾の補給ができなくなり、更には現代魔術の行使や魔力による身体強化も出来なくなり戦闘が不利になるのだ。

 父さんは俺が3日で作り上げたことに対しても驚いて、「やる気が起きるようには仕向けたが、まさか3日で作り上げるとは……」と呟いていた。そのあと父さんに、なぜ魔法陣の光学迷彩や詠唱破棄なんかしたのかを聞かれたので答えて上げることにした。ぶっちゃけ転送したことが相手にバレるのは拙いと思ったのだ。魔法陣が現れる度に空間転移をするなら相手に魔法陣が現れる度に空間転移をしてますよと教えるようなものだし、それに武器が無いと油断しているところに魔法陣が現れてせっかくの油断を消してしまったら、不意を突くアドバンテージがあるのに失われてしまい殺……怪我を負わせることが出来なくなるのが勿体ないと思ったからだ。
 「そこまで考えるか……」と父さんが若干引き気味だったが、士郎さんとマスターは相対する敵に殺せる機会があったら問答無用で殺す人だから考え方が写ったのだろう。俺の場合は特にマスターの影響が濃いからな。父さんとしては、活かせるモノは活かすの精神で現代魔術の常識を2つばかりぶっ飛ばした俺の思考回路に頭を抱えたくなったのかもしれない。
 まぁ、これは俺じゃなくてもやろうと思えばできたことだ。光学迷彩は思いつけば良いことだし、詠唱破棄は単純な転路呪語だったからこそ出来たのでそれなりの腕の現代魔術師ならできると思う。平行処理の短縮に挑んでいる俺からすればお茶の子さいさいも良いところだ。

 作った理由は上に書いたこと以外にも存在しており、空間転送が出来ても実戦でスムーズにいかないと士郎さんとマスターからダメ出しを貰い作り直しになるかもしれないと思ったのだ。そのことを父さんに話してから、ダメ出しを貰い続けると期限になりそうだったから睡眠時間を削って全力で作ったと暴露したら、「あ、この前言った訓練の路線変更とか訓練は嘘だぞ」と言われて、俺、呆然。
 「あれはやる気を出させるための嘘で、転路呪語コードはマスターが作った方が良いって言ってから実力を謀るテストがてらに便乗した」とか言いやがってので、久しぶりに怒りの右フックを父さんの脇腹に炸裂させた。「ぐふっ……」と父さんは呻いたあと楽しそうに笑ったと思ったら、「なにか足りないと思ったら、最近ご無沙汰だったなぁ……!!」と叫んだのを合図に双方戦闘態勢に移行して久しぶりに大喧嘩した。オチはいつもの母さんのアイアンクローで、父さんの母さんからの怒られぷりは俺の怪我が完治していなかったともあり半端なく叱られていた。ちなみに俺はリニスと幽霊ちゃんの2人掛かりで叱れて、それらの光景を見ていたポコたんはため息を吐きながら妹の面倒を見ていた。

 俺に宿題と料理を教わりに来たなのちゃんに、「久しぶりに喧嘩してたね」とにこにこしながら言われた。やたらと嬉しそうな顔していたなのちゃんはやたらと印象的で、なんでそんなに嬉しそうなのかと聞いたら「いつも通りだから」と答えてくれた。いつも通りと言えばそうなのだろう、ほぼ毎日父さんとは喧嘩してたしな。まぁ、父さんと喧嘩することも俺の日常の一部なんだろうな。



η月+日

 今日当麻が海鳴にやって来た。お昼過ぎに俺の家でなのちゃん達と遊んでいたら、チャイムが鳴ったので母さんが出たら上条一家が挨拶に来た。当麻は俺達が遊んでいた部屋に来て、上条夫婦は居間で父さんと母さんと一緒に駄弁っていたようだ。当麻は初見であるあーちゃんとすずちゃんの存在に部屋に入ってからすぐに気づいたらしく、俺となのちゃんに「久しぶり」と声をかけてからすぐに2人に自己紹介をはじめた。
 当麻の自己紹介が終わってからあーちゃんとすずちゃんが当麻に自己紹介をして、取りあえず3人の最初の挨拶は終了した。そのあと当麻からどういう経緯であーちゃんとすずちゃんと知り合ったのかを聞かれたので、取りあえずヘアバンド強奪事件の全てを赤裸々に語ったところ、どうやらあーちゃんの中ではヘアバンド強奪事件は黒歴史になっているらしく、「むぎゃーーー!!」と悲鳴を上げながら、久しぶりに顔面へのグーパンを飛ばして俺を物理的に黙らせて来たんだぜ。
 当麻はその光景に少し驚いていたがなのちゃんとすずちゃんが、「最近ご無沙汰だったけどいつものことだから気にしなくて良いよ」と声を揃えて言ったら、「そうか……」と納得して口を閉じた。いや……、ある意味では日常の一部だけど殴られるのは趣味じゃないぞ。生温かな当麻の視線が若干気になったんだが勘違いされてないよな……?

 それから妹を当麻に紹介してから5人で遊んでいると気がついたらあっという間に夕方になってしまい、今日は挨拶に来ただけの上条家の皆は、予約したホテルのチェックイン時間がそろそろなのでと、夕食を準備に取り掛かる時間の前には帰ってしまった。それに伴い今日の遊びは解散して終了した。
 さて、明日は久しぶりに当麻と遊ぶのは良いがなにをして遊ぼうか……。

P.S 学園都市の学生である当麻は当然のように超能力開発を受けているだろうから、どんな超能力に目覚めたのかを聞いてみたところ規格外の返答が返って来た。超能力開発をする前から目覚めていた幻想殺し(イマジンブレイカー)と言う右手に宿っている力を超能力開発の代わりに発見されたとのこと。
 ちなみに能力の内容は異能であるのならなんでも打ち消す能力だそうだ。……それなんてチート? 使い方次第では下手な異能よりも強いじゃん……、弱点を挙げるのなら現代兵器に対しては無力という点が存在するが、戦闘訓練を受けて武術とか学べば無敵とはいかないが大抵の敵を倒せるようになるじゃん。俺の現代魔術も消されるのかなぁ……。
 当麻はなにかのバトル漫画の主人公なんじゃないかとも思うが、きっと気のせいだろう。現実にバトル漫画のように世界規模の危機なんて訪れることなんてないだろうしな。

 ……幽霊や使い魔や現代魔術なんて存在が現実には存在してたのを素でおかしいと思わなくなってた……。俺の常識はどこに行った!! あぁ……、お別れしたんだっけ。


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