Ψ月π日
あの旅行から帰った日に付けた日記の最後に血文字で書かれた、取り憑いてます宣言を見つけてから二日経った。
昨日一日警戒していたが、もうどうでも良くなったのでちゃっちゃっと何時も通りに日記を書いていこう。正直あの程度のことで一々過剰反応していたら、俺はこの家で生きていくのは不可能なのだ。
血文字で書いた主に関しては、日記に妖精さんが居て見守ってくれて居るのだと思っておこう。
うん、ファタジーだ☆
さて、現実逃避は程々にして今日の出来事を書いていこう。今日は幽霊ちゃんの秘密を調べてみた。秘密と言っても、あんな事やこんな事を調べた訳ではなく、俺が体験したあの出来事と強制成仏したエキストラさん達の中の若本ボイスの人が最後に言った『食神様』についてだ。
先ずは『食神様』だがネットで調べたところ、俺が旅行に行ったあの田舎町がまだ村だった頃に食人の風習があり、その風習を広めた神聖な神様として村の中の権力者から崇められていた様だ。
食人の風習自体は明治維新後に途絶えたが、『食神様』が崇められていたのは江戸時代の中頃から昭和の初期までと二百年近く崇めらて居たようだ。
そして、村に伝わっていた食人の風習だが主に人を食うのは権力者で食われるのは村人だった様だ。
食人の対象は子供や未婚の女性などが対象だったみたいだ。その食人の対象基準に時代の背景が窺えた。
ちなみに、食人をする前に人間を調理すると言う特徴があったらしく、記録に残っている限りは人間の踊り食いや生きたまま丸焼きにしたり、人間を解体して刺し身にして食ったなどがあった。幽霊ちゃんは釜で茹でられてから食べられたらしい。
そして、俺が体験したあの出来事に関してだが幽霊ちゃん曰く、廃絶されてもなお信仰していた『食神様』信者の幽霊であるエキストラさん達が死後も神隠しと言う形で食人の風習を続けていたらしい。
あの場所自体はこの世とあの世の境界らしい。
ちなみに何故俺が、神隠しに選ばれたかと言うと、一度死んで転生なんて言うとんでも体験した為に『死』に近しい人間になっていたため、招き易かったのだと。幽霊ちゃんもだからか俺には、かなり取り憑き易かったらしい。
正直、取り憑きやすいとか言われても嬉しくねぇ……。
話は変わるが幽霊ちゃんは何故、成仏できないのか聞いてみた。
理由としては、幽霊ちゃんがこの世に囚われる未練が何なのか気になったのだ。
幽霊ちゃんは俺に未練のことを訊かれると顔を赤くしてから俯いて、恥じるように顔を逸らして「な…何のことだか、わかりません!」とあから様に誤魔化しやがった。
自分の未練が分からない訳がないだろう、と突っ込んでみたが答えなかったので手掛かりを元に考えてみた。
食人風習があったのは明治維新前、食人の対象は子供か未婚の女性、幽霊ちゃんが人には言いたくない…つまりは恥ずかしい事柄である、幽霊ちゃんの外見年齢は十六、七歳。
この四つのキワードで俺はある答えを見つけ出して理解した。
幽霊ちゃんの未練は行き遅れであったこと……。
時代が時代だけに幽霊ちゃんの歳でも行き遅れだったんだろう。
察した時は何か他人事な気がしなかった。指摘したら、「しょしょしょ、処女じゃありません!」とどもっていたので行き遅れな上に処女なのだろう……。
ごめん……、幽霊ちゃんが俺に思えて、辛くなって思わず同情で泣きそうなってしまった…。
思い出すとまた泣きそうになる……。
幽霊ちゃんには黙っていたが、取り憑かれるべき宿命に俺達はあったのかもしれない。
幽霊ちゃんの成仏条件は処女喪失らしい。取りあえず成仏条件がマトモじゃない上に、幽霊じゃあ肉体がないから処女喪失は無理だろう。
幽霊ちゃんの成仏は俺が生きている限りどころか永遠に無理な気がする。
改めて言うけどカムバ―ック! マトモじゃないけど、今よりはマトモだった俺の日常!! 成仏が不可能な幽霊に取り疲れるなんて有り得ねぇ―!
Ψ月◆日
なのちゃんに泣きつかれ、国語の宿題を手伝っている今日この頃。夏休みも残るところ三日になり激しく鬱だ。
夏祭り以来にあーちゃんとすずちゃんと会い、我が家で夏休みの宿題状況の報告をした。
報告結果はなのちゃん以外は全員夏休みの宿題終了。
なのちゃんも国語以外の宿題は終了している模様。と言うか、俺が手伝っても未だに国語の宿題が終わらないなのちゃんは、俺に泣きつく前の国語の宿題の状態は何れだけ酷かったんだろう?
なのちゃんは俺の宿題が全部終わってる事に無茶苦茶驚いていたが、最初の一週間で終わらせていた事を言うと全員が驚いた。
なのちゃんとは、ほぼ毎日遊んでたから驚くのは分かる。それに午前中は基本的に御神流の鍛練もしていて、午後は遊んだりバンドの練習をしたりしてたから端から見れば宿題をする暇は無いように見えるだろうし。
取りあえず、あと三日以内になのちゃんの国語の宿題を終わるように手伝ってあげなければ……。
来年は早い段階から気に掛けておこう。
Ψ月Å日
夏休み終了。振り返って見れば俺の平凡とは程遠い日常らしく、この夏休みもとんでもない出来事があったものだ。
なのちゃんの宿題も昨日全部終わったし、今日は海鳴の浜辺で花火大会をした。
参加一家は俺ん家と高町家とバニングス家と月村家だ。
ちなみに、親父どもは恒例の如く酒を飲み始め母さん達は雑談だ。
すずちゃんの両親は来ていなかったが、そこら辺りは色々事情があるのだろうから訊くことはしなかった。
リニスもバイトの密度が夏休み最後だったためか濃かったらしく、疲れて俺の部屋で寝てしまっていたので居なかった。
きょーにいさんは忍さんと完全に二人きり状態の、端から見たらイチャラブ空間を作り出していた。母さん達のいい見世物になっていたがその辺りも忍さんの計画通りなんだろう。
外堀から埋め始めたか……。忍さんと目があった時、周りにバレないようにグジョッブサインを出したら、グジョッブサインを返された。
俺も機会があったら外堀を埋めるのを協力しよう。きょーにいさんは気が付いたら、忍さんの愛によってがんじがらめになっていれば良いと思う。
なのちゃん達と花火をやっていると、ポコたんと幽霊ちゃんが珍しい物を見た様に花火を見たので、調子に乗って花火を手に持てるだけ持って駆け回ったら疲れてしまい、最後に線香花火をやるまではポコたんと幽霊ちゃんと一緒にのんびりとなのちゃん達がやる花火を見ていた。
線香花火のセンチメンタルな散り様で締めて、後片付けを終えた頃には親父どもはべろんべろんに酔っており、それぞれ自分の嫁さんに叱られていた。
久しぶりの飲み会だからって外なんだから自重しろよ……、親父ども。
取りあえず、酔っ払った親父どもを鮫島さんの運転する車で運んでくれる様に頼んでくれたあーちゃんの母さんにはマジで感謝だ。
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