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小学生編(前期)
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Ψ月※日

 今日は大人気なく、ぶちギレてしまい廃寺を現代魔術で吹き飛ばしてしまった。反省しなければな。
 取りあえず、廃寺を吹き飛ばした経緯から書いて行こう。

 忍さんが朝からノエルさんと何やら企画しているかと思ったら、朝食を食べ終えたあと今日の夜に肝試しを予定している事を全員の前で報告した。
 驚いて忍さんの方を見ると、俺と目があった瞬間にニヤリと口端を持ち上げ笑う。
 その笑みに含まれたものを察した俺は思わず、忍さんの行動力の早さに舌を巻いてしまった。

 だってさ、確実に昨日俺が提案した、自分色に染め上げてしまえ発言が忍さんの行動原理だし本当に行動が早いと思ったんだよ。
 ちなみに、思った理由は俺と目が合った瞬間に笑ったからだ。
 アレは確実に俺が発言してくれたお陰だ的な物だったろう。
 だがその笑みを見て、真っ先に思い浮かんだ印象は時代劇の悪代官が悪事を企てた時にする笑みだったがな……。

 日中は夜に肝試しをすることが決まっていたため自由行動になっていた。肝試しに行くのは夜の八時になってからで、其までの間は寛いで居たかったし、帰ってからは日記を書いたら直ぐに寝たかった。
 だから俺は、昼間の内に風呂を済ませようと露天風呂に行って、同じ旅館の客と思われた見知らぬじいさんと寛いでいたのだが、何故かなのちゃん達が男湯の露天風呂に入ってきた。

勿論タオル一枚だけ持って身体を隠さずに。

 エロゲシュチュですね、分かります。
 だがしかし、残忍ながらなのちゃん達が来たところで、キャッキャッウフフイチャイチャイヤーンな展開には成るわけではないし、むしろ小学一年生にそう言ったエロゲ展開を期待するのは人として終わって気がする。
 それに俺はなのちゃんとはそれなりの頻度で風呂に入っているので、まったく何にも感じなかった。欲情? なにそれ美味しいの?な気分だ。

 同じ露天風呂に入っていたじいさんは「可愛らしい天使がお迎えに来てくれたようじゃ~」、と今にも昇天しそうな顔をしていたので、お迎えにはまだ早いので戻って来て下さいと言っておいた。
 いきなり、ばったり逝かれてしまうのは激しく心臓に悪いしな。

 すずちゃんは身体を洗って露天風呂に大人しく浸かっていたが、なのちゃんとあーちゃんは自分達の裸を見ても何にも感じないのかと言ってきた。
 何を当たり前の事をと思い、おっぱいがでかくなってから出直して来なさいと言って置いた。当然だがダブルでグーパンを喰らわされました。

 その後二人は、自分のナイチチの前に手を持っていき揉もうとしていたが、あるのは俺の胸とそう変わらない膨らんですらいない胸だったので、揉めてすら居なかった。それが微笑ましくて、つい笑ってしまったらグーパンされてしまった。
 これは自業自得だったのだろうか……?

 夕御飯を食べ終えて日が暮れた七時半頃になってから、忍さんが肝試しの場所に選んだ廃寺への参道がある鳥居の前に全員集合した。

 忍さんからのルール説明を聞くと、廃寺の裏にある祠に辿り着いてから、配られた御供え物のおはぎを御供えしてから帰ってくるのがルールらしい。
 なお、御供え物を供えたのを監督するのは、今は引退した旅館の元大女将さんが肝試しに丁度良い場所がないかを訊いた時に、教えたついでに引き受けてくれたらしい。
 元大女将さんはデバガメしたかったんだな。そうじゃなければ、暇を持て余していたのかのどちらかだ。

 そして、ファリンさんとノエルさんは脅かし役に廻ていたので、何処にも居なかった。
 こう言う催しの場合は、大抵が二人一組に別れるものだが、今回は年少組である俺達四人ときょーにいさん&忍さんペアに分けられた。

 先に行くのは俺達の組からで、十分後にきょーにいさん達のペアが出発する。
 参道から廃寺までの距離は三百メートルと異常な迄に長く、手入れをされていない寂れた廃寺までの参道はかなりの雰囲気があった。

 あーちゃんは強がって先導していたものの、若干震えていたのを俺は見逃さなかった。なのちゃんは完全に恐がって俺の手を握ったまま離さずにいた。
 ただし、すずちゃんだけは特に恐がった様子を全く見せなかったけど。

 そして、しばらく歩いていると途中で霧……、と言うよりも演出と思われるスモークの様な煙に覆われて気付いたら、全員とはぐれ手を繋いで居た筈のなのちゃんも何処かに消えていた。
 とにかく、廃寺の裏にあると言う社に向かえば合流出来るだろうと思い、参道を歩いて境内に着いた。
 境内に着いた瞬間大勢の人間の気配と視線を感じて、周りを見渡したが特に誰も見当たらなかったので無視して、廃寺の方に向かうと後ろから女の子の声が聞こえて振り向いた。

 歳は十六、七歳くらいで、黒髪ストレートの髪を腰まで伸ばした、着物を着た見知らぬ少女だった。年相応に発育した身体に、綺麗と言うよりは可愛いと思わせる整った容姿は一言で言うのなら美少女だ。
 ファリンさんでもノエルさんでもないので、肝試しの演出のエキストラさんかと思っていたら、女の子―仮称美少女A―は足を縺れさせて頭から転び、顔面を石畳にぶつけて鼻血をダクダク流し始め、その整った顔が鼻血だらけになってしまっていた。

 リアルドジッ子に俺、呆然。仮称美少女Aは、相当痛かったのか鼻を抑えて蹲って涙目になっていた。
 仮称美少女Aは、蹲ったままで鼻血を拭ったり、止まれるための栓をしない為ハンカチやティッシュを着物だし持っていないのだろうと思い、俺の半スボンのポケットに入れていたティッシュを仮称美少女Aに上げた。
 お礼を言ってから、仮称美少女Aは廃寺と旅館の中間に流れる川の方に向かったので、俺は肝試しを再開した。

 廃寺の前に着いたのだが、その時になって境内に着いた時に感じた人の気配と視線は倍以上に感じ、更にこの世の物とは思えない呻き声と動物の内蔵を抉り出したり掻き回したりするような音も聞こえていた。
 忍さんの演出は本当に旨かった。なにしろ廃寺は、ハリボテでもしてあったのか外見はかなりキレイで、所々に小さな穴が空いては居たものの、そこからは光が洩れ、無数の目が俺を見ていた。
 普通の小学生どころか中学生でも、下手したら泣き出すシュチュエーションだった。

 俺が廃寺の裏に廻り、おはぎをお供えに行こうとした時、廃寺の扉がガバッと開いて「食物じゃ―!」、と叫んだ着物を着た人が五、六十人は出てきた。エキストラの人お疲れさまで―す、と言ってから立ち去ろうしたら凄い力で廃寺の中に連行されそうになった。

 肝試しの目的が達成できないので離してくれと言っても離してくれないので、母さん譲りの怪力で振り払うが進ませてはくれなかった。
 仕方がないので怪力で投げ飛ばしたが、それでもエキストラの人達は邪魔をしまくってきた。
 それで今度は最終手段で廃寺の中に叩き込んでから進もうとするが、次から次にエキストラの人達は湧いて出でてきて人数は最終的には百人近くになってしまった。
 一時間経った辺りからは流石の俺も我慢の限界に達してぶちギレた為、十人ずつ纏めて廃寺にぶち込んで現代魔術で廃寺ごと吹き飛ばした。
 そしたら、エキストラの人のモノと思われる「食神様に栄光あぁれぇぇぇいぃぃぃ―!」と、言った若本ボイスの声が聞えた。

 その後に、再び演出と思われるスモークが境内を覆い、暫く歩いてスモークが晴れた時には何故か参道前の鳥居に着いていた。
 鳥居では、なのちゃん達と元大女将さんと思われるお婆さんが必死で俺を探していたので、すぐに声を掛けたらなのちゃんとあーちゃんに抱きつかれて、泣かれてしまった。
 取りあえず二人の頭を撫でたら、更に強く抱きつかれてしまった。すずちゃんは小さくため息を吐いて「相変わらずだね…」とか呟いて居たが何がさ?

 しばらくすると、全員が鳥居に集まり何をしていたのかを聞かれたので、俺が体験したことを全て話すと全員が何故か顔を真っ青にして黙りこんでしまった。
 それにしても、エキストラの人達に掴まれた所が痣だらけで痛い……。腹いせに供える予定だった、おはぎを食べてやった。



Ψ月Υ日

 無事に我が家に帰還! なんて事はありませんでした。
 朝起きて、顔洗いと歯磨きに洗面所に向かったら昨日の仮称美少女Aが鼻にティッシュを詰めて、俺の背中に乗っかって涙目で俺の事を睨んでいた。
 目を擦って、頬をつねって、グーで自分の顔を殴って、顔を洗って、歯を磨いてから、再び鏡を見てみたが相変わらずその光景は鏡に写ったままだった。

その時の俺の気持ち→今更な気がするが、さようなら…俺の平穏。

 取りあえず、俺の常識やら平穏やらが遥か彼方に去ったのは本当に今更なので、気を持ち直してから仮称美少女Aをよく見ると昨夜と違い半透明なことに気付いた。
 もしやと思い、洗面所にやって来て俺を見たあーちゃんを観察するが、俺を見ても何時も以上の反応は示さなかった。

 それで確定した仮称美少女Aは幽霊なのだと。仮にも俺は元科学者だが、転生なんて言うとんでも体験をしている上に、『存在の否定の証明』がされてでもいない限りは、目の前の存在を疑うなんて科学者だったからこそするつもりはなかった。

 急いでトイレに入ってから、仮称美少女Aに背中から降りる様に言うと素直に降りてくれた。
 どうやら、俺と仮称美少女Aの体格差から言って、おんぶの大勢はかなりキツかったらしいので素直に降りた様だ。

 それから何故、俺に取り憑いて背中に居たのかを訊くと、昨日俺が仮称美少女Aの住処であった廃寺を消し飛ばしてせいで幽霊仲間……、と言うよりは仮称美少女Aを昔に釜で茹で殺した、昨日のエキストラさん達が強制成仏してしまったのだと言う。
 仮称美少女A以外の殺された者達も全員強制成仏してしまい、たまたま俺にエキストラさん達に襲われる前に逃げるように警告しようとした時、ドジで鼻血を出してその場を離れていた仮称美少女Aだけ、成仏しそこねたのだと言う。
 そして、自分一人だけ取り残され、寂しい思いをしなくてはならなくなってしまった。だから、全員を強制成仏させた腹いせに取り憑いたらしい。

 ちなみに、背中に居たのは怨霊っぽいからだと。
 実際は涙目で鼻栓してたから、怨霊どころか普通の幽霊にすら見えなかったけど。

 涙目の仮称美少女A改め、幽霊ちゃんはシクシクと泣き出し、周りではポルターガイスト現象が発生して、旅館が揺れ始めた。

 取りあえず鼻血は止まって居るだろうから、鼻栓を外してからトイレの中に捨てて、頭を撫でて(意外な事に接触出来た)慰めた。

 しばらくすると、ポルターガイストは収まり、幽霊ちゃんは俺に抱きついて泣き始めた。
 最近、美少女達からやたらと抱きつかれるのが多いが気のせいではないだろう。死亡フラグは立ってないよな?

 そして、なぜか幽霊ちゃんが俺に取り憑くの確定になってしまった……、俺の平穏カムバック。

P.S 帰ったら案の定、幽霊ちゃんを見た瞬間に父さんがお決まりの「エロゲ主人公氏ねー!」ドロップキックの洗礼がやってきたので、避けてから母さんに旅行の件を伝えてくれた事に礼を言ってから一回だけ反撃は見逃して置いた。

 妹もポコたんも俺の帰宅に大喜び、母さんとリニスは料理を作っており、お帰りなさいと言ってくれた。
 母さんはまた女の子拾ってきたのと言ってきたので、幽霊ちゃんを紹介して幽霊なので食べ物はいらないことを言っておいた。
 つうか、またってどう言う意味だよ……。あと当たり前のように、我が家の家族全員も幽霊ちゃんのことが見えるようだ……。
 まぁ、魔窟の我が家では幽霊が見える程度は当たり前なのだろうから、突っ込みを入れても仕方がないか……。

 晩御飯を食べた後、母さんに荷物の事に対して礼を言ってから、あと狙い澄ましたかの様に二冊目だった日記も母さんが入れたのかを訊いてみたが違うと言われた。
 疑問に思い、家族全員に訊いて見ても誰一人として、入れていないと言う……じゃあ誰が?









クスクス…。
随分と鈍いわね……。
貴方に憑いているのは今日、拾った幽霊さんだけじゃないわよ……、科学者さん?


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