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幼稚園編
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ν月〆日

 暖かくなってきた今日この頃。最近の予定と言えば今月の終わりに控えた母さんの出産予定日と、幼稚園の卒園式だろう。

 父さんは俺の卒園式と母さんの出産日が重ならないかドキドキしていた。何故そんなにドキドキしているのか訊いてみた所、幼稚園の卒園式の日に父親達全員で記念の飲み会を予定しているんだとか。
 やはり父さんは何処まで行っても父さんだと思った……。欲望に忠実じゃなければ、そんなのは父さんではないなのだ。例えるならカレールーの無いカレー、つまりは肉じゃがでありまったくの別物料理と同義なのだ。
 息子の卒園式を祝う気が欠片もないのは、ある意味尊敬に値することなのかもしれない。

 幼稚園が終わってからはなのちゃんと家でおままごとに付き合わされた後、なのちゃんは何時もの日課で帰る前にお腹の中の妹の様子を見ていた。
 いつ見ても微笑ましいのぅと和んでいると、なのちゃんがお腹を蹴る音がしたの!と我が事のように嬉しそうに俺と母さんに言ってから帰った。
 ああ言う優しい所を見ると、将来なのちゃんは良い母親に成ると思う。手を出すのが早いけどね。

 そう言えばこの日記帳の一冊目もあと1ヶ月位で終わる。考えてみれば日記帳を書き記し始めて一年は過ぎている。
 今日の分の日記を書き終えたら約一年分の日記を読み返そうと思う。



ν月Θ日

 今日も朝から憂鬱な気分だ。何故かと言うと日記帳を読み返して当麻が帰った次の日に書かれた黒歴史を読んでから、思い出してはここしばらく悶えてしまっているからだ。
 今思い出しても思うが、いくらなんでもアレはねぇよな……、あの日あの時の俺……。
 けど明日のなのちゃんの誕生日までには吹っ切ろうと思う。

 だが憂鬱な気分とは引き換えにポコたんと始めて会った日、つまりホワイトデーでもあったので準備しておいたクッキーを母さんとなのちゃん達に渡してから、ポコたんにもお祝いの代わりにあの時と同じクッキーを上げた。
 ポコたんは涙目になってポコポコ鳴きながら、クッキーを平らげた。

 ポコたんは俺が忘れていたと思ったかも知れないが残念ながら、いろいろと覚えやすい日だったし何より家族の増えた日だと書き記したんだから、ポコたんを祝わない訳がない。

 今日はホワイトデーで、ポコたんが家族になった大切な記念日だった。



ν月Σ日

 憂鬱な気分など今日と言うの日のお陰で地平線の彼方に吹っ飛んでいったさ!
 …………ごめんなさい、テンション高すぎて自分でも何を書いてるのか分からなくなってしまいました。

 今日なんと俺に妹が産まれた。よし…まず順を追って整理しよう。
 まず今日はなのちゃんの誕生日だったので、去年と同じく祝い誕生会終了後家に帰宅後母さんの陣痛が始まった。
 父さんはあわわわ、と珍しく取り乱していたのでグーパンを食らわせてから正気に戻らせてから母さんに付き添う様に指示し、俺は救急車に電話しその間にポコたんに援軍に桃子さんを呼んで貰った。

 それから桃子さんと駆けつけると、何故か父さんがラマーズ呼吸法をしていた為グーパンして母さんから引き剥がし、救急車が来るまでの対処方を桃子さんに指示して貰った。
 そして救急車が到着してから桃子さんにお礼を言ってポコたんを預かって貰い、俺と父さんは母さんと一緒に病院に行き、そして到着後妹が無事生誕。当たり前だが父さんは最後まで糞の役にも立たなかった。

 取りあえず今日は入院する母さんと別れ、俺と父さんは家に帰った。
 帰り道での父さんの足元はまるで現実感の無いようにふらふらとしていたので、俺がしっかりと支えておく。
 今日の父さんは家に帰るまで本当に腑抜けとしか言いようがなかった。



ν月〇日

 今日は卒園式。昨日退院した母さんと我が妹も来た。
 今朝はかなり眠い中で幼稚園に向かった。何というか妹の夜泣きが酷かったのだ。
 赤ん坊の泣き声は声が高いから頭に響くんだよな……、お陰で俺も眠れたもんじゃなかった。
 そこで役立ったのはポコたんマジック、ポンポコーと言って顔だけ父さんで下半身が狸とか気持ち悪い生命体以外の何でもないものに変身したところ、妹にマジ受けして夜泣きは無事収まった。
 ポコたんにはマジで感謝だ。多分、今夜も泣くだろうから手伝って貰わねばならないな。

 幼稚園の卒園式は終わり父親衆は飲み会に行った様だが、父さんは母さんが昨日退院したばかりなので自重しならばと士郎さんも父さんに付き合って飲み会には参加しなかった。
 こうしてると不思議なんだが、以前父さんと士郎さんが殺し合った関係とはとても思えなかったが、俺の知らないところでそうゆうのを埋める何かがあって、二人は今の関係で居るのだろうと思う。

 なのちゃんは我が妹が気になるようでしきりに母さんの方をちらちら見ていた。母さんに抱いてみるかと訊かれてなのちゃんは頷き妹を抱っこした。妹はなのちゃんに抱かれてキャッキャッと喜び、なのちゃんもそんな妹を見てものすごく喜んで笑顔で妹を抱っこしていた。やっぱりなのちゃんは将来良い母親になるなと改めて思った。

 晩飯は卒園祝いに寿司を頼んだらウニを取り合い、父さんと喧嘩し久々のアイアンクローを頂き二人で吊るされた上にウニは母さんに食われた……、理不尽だ。そして酷すぎる…俺のウニ……。


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