WEBレポート 施工業者から見た太陽光発電
メンテフリーではない?
2012/03/21
太陽光発電システムの施工訓練の様子
二つめは 「アフターサービスの問題」 だ。
太陽光発電システムは従来、“メンテナンスフリー” とされてきた。 20~25年程度とされる寿命のあいだ、メンテナンスは不要だというのだが--実際はそうもいかないようだ。
たとえば、こんな調査結果がある。 2011年3月に三重県が実施した 「住宅用太陽光発電実態調査」 によると、回答者の8.6%が何らかの故障・修理を経験しているそうだ。 調査対象の大部分は設置後5年未満とのことで、経年劣化に伴いさらに故障が増える可能性もあるという。
セミナーでも複数の講師がメンテナンスの必要性を訴えていた。
「メンテナンスは最近注目されるようになった。 メンテナンスをしない太陽光発電はありえない」 (関口氏)
「特に、今後普及が見込まれる産業用は、安定した収益を上げるためにも、稼働率を上げる必要がある。 これまで太陽光発電はメンテナンスフリーだと言われてきたが、よりよい発電のため、そろそろリインベント (再定義) の時期に来ている」 (前出の国府田氏)
しかし、その一方で、 「設置後の対応をしない業者が増えている。何かトラブルがあった場合、消費者はどこに話を持っていけばいいのか分からない」 (前出の木下氏) との指摘も。 その背景には、太陽光の急激な普及に伴う施工業者の不足と、販売価格の低下があるようだ、
■ 売れば売るほど…
太陽光発電システムの施工業者は不足している。 前出の関口氏は、自身の経験から以下のように語っていた。
「昨年8月はどこの施工業者もスケジュールが一杯で、組合 (関口氏が代表理事を務めるエコシフト技術工事協同組合) にも、業者を紹介してくれとの連絡が相次いだが、どうにもできなかった」
このときの月間施工件数が2万5千件。 関口氏は、この件数が現状きちんと施工できるぎりぎりの線だと見ている。 施工業者は設置だけで手一杯の状況になっているのだ。
一方、販売店の方は、太陽光発電システムの価格低下にも影響を受けている。 価格が下がった分、数が出てくれればいいが、そううまくはいかず、利益が取りづらくなっているのだ。 その中でアフターサービスに応えていくとなると、まさに 「売れば売るほど大変」 ということになってしまう。
そこで、最近ではアフターサービスを専門に手がける会社も出てきた。 セミナーで登場したのは、総合燃料商社シナネンの子会社 「太陽光発電サポートセンター」 。 同社は専用の機器を使い、パネルの洗浄や設置状況の点検、発電量の計測といったサービスを全国で展開しているそうだ。
「販売店・施工店は設置で手一杯で、顧客の問い合わせにすぐに応えられなかったり、また、人によって答えが違ったりする場合もある。 アフターサービス部門を当社に一括アウトソーシングいただくことで、メンテナンスの標準化やマンパワーの有効活用が可能になる」 (鶴岡重昭・営業部部長)
太陽光発電システムはまだ “若い” 商品なので、初めて設置する顧客が多く、不安や疑問も発生しやすい。 業界のさらなる成長のためには、そうした声に応えていくことが必要--との認識が少しずつ広まっているようだ。
■ まだまだ発展途上
ここまで (1) 施工業者の質の問題、 (2) アフターサービスの問題の2点について見てきたが、いずれの問題も、まだ太陽光発電システム市場が発展途上だから起こったことだろう。
ユーザー側の視点から講演した王将フードサービスの奥野耕平・環境問題対策室室長は、店舗への太陽光発電導入について 「はっきり言って、PR効果が狙い」 と言い切っていた。 そしてもう一つ、 「 (新製品・新技術の) 情報収集は一担当者の力では限界がある。 情報交換・意見交換がこれからますます大切になる」 とも。
太陽光発電システムを導入するユーザーは、完成された商品・サービスをただ買い求めるという姿勢ではなく、よく学び、よく調べ、 「エネルギーの未来をともに切り開いていくのだ」 ぐらいの気持ちで臨むのがいいのかもしれない。(おわり)