3.11から二カ月が過ぎ、報道の重心は復旧・復興へと移りつつありますが、月刊誌には新聞や週刊誌とはまた違った役割があると思っています。
大震災は私たちの文明が本来的に持つ危うさや、日常の中で忘れがちな生の儚さを改めて突きつけました。3.11を境に何かが変わった。そのことについてじっくり考えてみたいと組んだのが、特集「震災後をどう生きるか」。刺激に満ちた「言葉と哲学」をぜひご一読下さい。
石井光太「遺体安置所の人びと」、稲泉連「今は絶望も希望もなく」は、気鋭の二人による腰を据えた三陸ルポ。日々の報道では伝わらない現実がここにあります。このほか池田清彦氏、養老孟司氏ならではの対談「ひとつになるなニッポン」など、読み応え充分な企画満載です。
今月号から編集長を務めることになりました。九年ぶりの古巣で初心に帰って時代に向き合いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
新潮45編集長 三重博一