強盗被告:「大阪地検が訴訟対策のぞき見」と国賠提訴へ

2012年1月28日 18時44分 更新:1月28日 20時15分

 強盗罪で起訴され大阪拘置所に勾留中の男性被告(41)に対し、大阪地検が刑事裁判進行中に強制捜査で弁護人宛ての手紙などを押収したのは、検察側と弁護側は当事者対等とする刑事訴訟法の原則に反するとして、被告側が国家賠償請求訴訟を起こすことが分かった。被告側は「訴訟活動の『のぞき見』だ」と主張する。大阪弁護士会刑事弁護委員会も提訴準備に協力し、全国の弁護士に弁護団への参加を呼びかける方針を決めた。

 控訴審で弁護人を務める山本了宣(りょうせん)弁護士によると、被告は窃盗容疑で09年6月に逮捕された。その後、強盗と覚せい剤取締法違反の疑いも浮上した。被告は否認したが、大阪府警捜査員から「強盗を認めれば覚醒剤は立件しない」と言われて虚偽の自白をした。そのため、強盗罪で起訴され、結局は覚せい剤取締法違反罪でも追起訴された。

 公判途中で、主張と証拠を整理する期日間整理手続きが行われ、大阪地裁は10年9月、強盗罪について、捜査員との取引があった疑いを指摘し、自白調書を証拠から排除。しかし、10年11月の判決では、共犯者の供述から強盗罪を認定し、懲役10年を言い渡した。

 山本弁護士によると、強制捜査は地裁の審理中に行われた。大阪地検は期日間整理手続きが終了した10年7月2日、大阪地裁から強盗容疑での捜索差し押さえ許可状を受け、地検の検察事務官3人が被告の独居房を捜索した。

 当時は期日間整理手続きの直後で、房内には証拠を含む裁判関係書類があり、事務官らは1審の弁護人に宛てた手紙や手紙の書き損じなどを押収。被告が拘置所に預けた荷物から、被告人質問の準備のため弁護人が差し入れた「尋問事項」と題する書面も押収した。

 被告側は起訴後1年近くが経過して裁判が相当進行し、期日間整理手続きで証拠整理も終えていたのに、検察側が弁護人との手紙などを持ち去った点を問題視。押収物から弁護側の手の内を把握して裁判で活用するための捜索だった可能性が否定できないとして、捜索や押収は違法だったと指摘し、「接見交通権の侵害にもあたる」と主張する方針だ。

 また、被告側は許可状を発付した大阪地裁についても、国賠法上の違法性の有無を検討している。【苅田伸宏】

◇とんでもないこと

 元裁判官の木谷明・法政大法科大学院教授の話 弁護人とのやりとりを捜査官に知られないことは、刑訴法で規定された被告側の基本的権利。検察が被告と弁護人との手紙を差し押さえるなどとんでもないことだ。弁護人との手紙と分かったら差し押さえるべきでないし、裁判所も令状に「弁護人とのものを除く」と明記すべきだった。強制権を持たない被告側が、弁護人とのやりとりまで把握されては、到底「対等の当事者」といえなくなる。

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