きょうの社説 2012年3月25日

◎がれきの受け入れ決議 被災者へ何よりのエール
 東日本大震災で発生した「震災がれき」の広域処理をめぐり、高岡市議会が、同市に受 け入れを求める決議を可決したことを評価したい。あの大震災から1年を経て、野田佳彦首相が国の責任で広域処理を行う方針を示したことで、これまでは限定的だった受け入れの動きが、全国的な広がりを持ってきた。

 がれきの受け入れに積極的な首長で組織する「みんなの力でがれき処理」プロジェクト の発起人に名を連ねた輪島市や富山市ともども、高岡市には、前面に立って北陸での受け入れの旗を振ってほしい。うずたかく積み上げられたまま、一向に減っていかないがれきと隣り合わせの暮らしを送りながら、復興を目指して格闘し続けている被災者にとっては、何よりのエールになるだろう。

 高岡市は既に、県からの照会に対して「条件が整えば、がれきの受け入れを検討する」 と回答しているが、「市民の声」を代表する立場にある同市議会の力強い意思表示に応え、できる限り早く、さらに一歩前に足を踏み出して具体的な準備を進めてもらいたい。被災地で今、最も求められているのはスピード感である。

 がれきの受け入れまでに、市町村がしなければならないことはたくさんある。まずは国 や県と連携して説明会を重ね、市民の不安を払拭することが欠かせないし、場合によっては、静岡県島田市などのような試験焼却も必要になろう。

 高岡市議会の役割も、決議で終わったわけではない。今後も市民の理解を得るための同 市の取り組みをしっかりとサポートし、時には一緒になって汗をかくことを望みたい。国や県の支援が十分に行われるよう、声を上げ続けることも大切だ。

 もちろん、「受け入れるがれきの安全を確認する仕組みや、情報公開の態勢は万全か」 「市が説明責任を果たしているか」などといった点にきちんと目を光らせ、不十分ならば尻をたたくことも、重要な仕事である。決議をした以上は、受け入れが実現するまでの過程だけではなく、処理がスタートした後も、傍観者になってはならない。

◎ガソリン高騰 戦争回避へ日本も役割を
 円高一服もつかの間、ガソリン価格が3年5カ月ぶりの高値水準となり、景気の不安材 料になってきた。米経済が予想以上に堅調なのに加え、イランの核開発を巡る中東情勢の緊張が原油価格を押し上げた要因である。

 米政府が日本のイランからの原油輸入量削減の取り組みを評価し、イラン制裁法の制裁 対象から除外すると発表したことで、イランとの原油取引が事実上できなくなる事態は免れたが、イラン産原油の輸入量はこれからも削減せざるを得ない。イスラエルによるイランへの軍事攻撃や、イランがホルムズ海峡の封鎖に踏み切るなどした場合、原油価格は天井知らずになる恐れがある。

 ホルムズ海峡はペルシア湾内の石油積出し港を行き来する全てのタンカーが通過する航 路の要衝である。ここを戦火に巻き込むことは、絶対に避けねばならない。イランと良好な関係を保ってきた日本は、戦争回避に一定の役割を果たせるはずだ。米国とイランの間に立って、暴発を防ぐ外交努力に取り組んでほしい。

 イラン情勢の緊迫化で原油価格の高騰が続き、石油元売り各社は卸価格を断続的に引き 上げている。レギュラーガソリン1リットル当たりの店頭価格は155円台に突入し、5週連続で値上がりした。米リーマン・ショック後の高値とほぼ同じ水準であり、業界内では原油卸価格がこの先、さらに上昇するとの見方が多い。

 内閣府公表の月例経済報告(3月)は、内需の底堅さを受けて、個人消費や設備投資な どを上方修正した。上場企業の業績も比較的好調だ。このまま円安基調が続けば、景気回復の足取りは確かなものになっていくのではないか。

 最大の懸念材料は、ガソリンをはじめとする原油価格の高騰である。イランで軍事衝突 が起きれば、世界経済は大混乱に陥るだろう。原油の大半を中東に依存し、多くの原発が停止中の日本も窮地に追い込まれることになる。

 日本政府は、欧米を軸とした対イラン包囲網に軸足を置きながらも、イラン政府への働 き掛けに全力を挙げてほしい。