琴欧洲(左)を下手投げで破り、大関昇進を確実にした鶴竜=大阪府立体育会館で
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◇春場所<14日目>
関脇鶴竜(26)=井筒=は大関琴欧洲を右下手投げで破って13勝目を挙げ、大関昇進の目安とされる3場所合計33勝に到達、場所後の昇進が確実になった。千秋楽で平幕豪栄道に勝てば初優勝が決まる。横綱白鵬(27)=宮城野=は大関日馬富士をはたき込みで退け、ただ一人2敗を守った。稀勢の里は把瑠都との大関対決を制して9勝5敗とした。把瑠都と日馬富士は4敗目。十両は3敗の皇風が単独首位で、千代大龍と大岩戸が4敗で追う。
◇
ありったけの力を込めて投げた。琴欧洲に寄られた土俵際。右の下手をつかんだ鶴竜はこん身の投げを放つ。一発で決まらないとみるや、すかさず右足を跳ね上げ、全体重を相手に預けながら投げ飛ばした。これで昇進の目安である直近3場所通算33勝に到達、同時に初優勝へ“マジック1”が点灯した。
「(自分から)出たら駄目。相手が寄ってくるところを狙って投げた。(頭を付けている時は)我慢、我慢と…。(下手投げは)思いっきり流れでいきました」
派手なガッツポーズやこぼれるような笑顔はない。「まだ実感ない。ああ勝ったなという感じ」。いつも通りのポーカーフェースは崩さないが「今まで13番勝ったことがなかった。そういう意味では大きいです」と喜びを表現した。
審判部副部長の朝日山親方(元大関大受)は、「立派だった。明日、昇進の話をする」と正午から審判部で会議を開くことを表明し「反対する理由はない」と事実上の大関昇進が決まった。
師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)は弟子に「みっともないから」とゲン担ぎを禁じている。厳しさばかりが強調される親方だが、親方は9日目に横綱白鵬を倒してから毎日、同じワイシャツを着て鶴竜の活躍を念じて、ちゃっかりゲン担ぎしている。取組後にはモンゴルの実家にいる母親のオユントグスさん(51)から「(顔から土俵に落ちて)ケガとかしてないか」と電話で心配された。28日の伝達式に「一生に1回しかないので親方と相談して承諾されればぜひ呼びたい」と話し、間に合うように来日する予定になった。
大関昇進と初優勝の二重の喜びとなれば1999(平成11)年名古屋場所での出島(現、大鳴戸親方)以来13年ぶり。昭和以降では15人目の快挙となる。「そういうことを考えると(体が)硬くなる。抑えて、抑えて、何もないと言い聞かせていきます」。あくまで平常心で、いつも通りに淡々と“M1”を自力で決める。 (竹尾和久)
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