名古屋グランパスの日本代表MF藤本淳吾(28)が25日のホーム新潟戦に強行出場することとなった。10日の開幕戦で負った右足首のねんざのため別メニュー調整が続いていたが、28歳の誕生日を迎えた24日、急きょ試合メンバーに復帰した。チームはMF中村を肉離れで、ダニルソンを出場停止で欠き、MF小川、吉村も故障を抱える状況。この“中盤危機”に、手負いの司令塔が救世主となる。
野戦病院状態のグランパスの命運は、右足首に爆弾を抱えるレフティーに託された。前日まで別メニューで調整をしていた藤本が、試合メンバー入り。ミニゲームでの動きを見守ったストイコビッチ監督は「小川、吉村を含めた3人の中では、藤本が一番いい」と出場を明言した。ボランチでの起用が濃厚。ぶっつけ本番だ。
練習後、居残りで左足のロングキックを繰り返した。軸足となる右足の感触を確かめるためだ。「多少痛みはある。踏み込みのときに怖さが残っていて、ガッツリ踏み込めない」と不安は残った。それでも「ガチガチには固めない。好きじゃないんで」とテーピングでの固定を否定。勝利につながるパスを送るために、悪化のリスクよりも感覚が鈍ることを避けた。
この1週間、藤本を欠いたチームは前節FC東京に敗れ、豪州遠征も引き分けて帰国した。テレビの中で苦闘するチームと、回復の遅れる右足首を比べ、ストレスをためた。そんな状況で迎えた28歳の誕生日。たくさんのサポーターからお祝いの言葉をかけられると、緊迫していた表情がようやく緩んだ。
「いい1年にしたいっていうのはありますね。とりあえず誕生日を迎えて試合をできるっていうのはうれしい」。そしてこう続けた。「バースデーゴールは考えない。チームが勝つことだけを考えてやります」。痛みも怖さもある。しかし、それ以上に勝利への欲求がある。使命を背負い、藤本が攻撃のタクトを振るう。
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