事件【主張】ストーカー殺人 信頼に応える警察であれ2012.3.25 03:18

  • [PR]

事件

  • メッセ
  • 印刷

【主張】
ストーカー殺人 信頼に応える警察であれ

2012.3.25 03:18 主張

 「警察はもう信用できない」と、遺族は怒りをぶつける。そう思うのも当然だ。

 千葉県警習志野署員がストーカーの被害届を先送りし、親睦旅行に行っていた問題だ。警察当局は真摯(しんし)に事件を再検証し、信用を回復してほしい。国民の信頼なくして治安は維持できない。

 昨年12月、長崎県西海市で2人の女性が殺害された。千葉、三重、長崎の3県警にストーカー被害の相談をしていた女性の、母親と祖母だった。

 事件後、3県警は「重大事件に発展するという危機意識が不足していた」との検証結果をまとめ、遺族に謝罪した。しかし、習志野署員が被害届の受理を先延ばしにし、北海道旅行をしていた事実は伏せられていた。その後の調べでは、県警幹部らが組織的に隠蔽(いんぺい)を図った可能性も出ている。

 娘へのストーカー被害を相談する父親に、習志野署の担当者は「刑事課が一人も空いていないので、1週間待ってほしい」と答えたという。2日後、この担当者を含む刑事課員らは2泊3日の親睦旅行に出かけた。被害届の受理が遅れる間に悲劇は起こった。

 公表された検証結果では、相談に即応しなかった理由は「他の事件捜査を優先した」と説明されていた。検証や謝罪に当たった千葉県警の生活安全部長や刑事部参事官は旅行の事実を把握していたが、県警本部長や警察庁への報告はなかったという。組織の体をなしていないお粗末さだ。

 警察庁によると、平成23年中に認知したストーカー事案は1万4618件で、家族らが被害を受けたケースも315件あった。西海市の事件で千葉県警は肉親の被害を想定外と語ったが、事例の教訓を生かせていない。

 ストーカー規制法に基づく警告に従わず、公安委員会が出した禁止命令は過去最多の55件で、警察庁も「ストーカーがより悪質化している」と分析している。

 11年に女子大生が元交際相手の関係者の男に刺殺された「桶川事件」でも、警察の対応が強く批判された。ストーカー規制法はこの事件の反省から制定された。

 どんな立派な法律を作っても、使いこなさなくては意味がない。それを実現できるのは、捜査に当たる警察官だ。関係者は今回の職業倫理の劣化を深く反省し、再生を果たしてほしい。

  • [PR]
  • [PR]

[PR] お役立ち情報

PR
PR

編集部リコメンド

このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。
© 2012 The Sankei Shimbun & Sankei Digital