危険なフェミ

2004年8月 9日

みなさん知らないかもしれないので言うのですが。・・・「ジェンダーフリー」って私がつくった言葉なんです。

うそ。

でもねぇ、ほら、誰でも思いつきそうな安易な言葉じゃないの? 私が一番最初に「ジェンダーフリー」に出会ったのは、今は昔の1993年。学生時代。喫茶店で「シュガーフリー」って書いてある砂糖をみて、思いつきました。ええ、本当ですとも。これが標語だ! と一人コーヒーをぐいっと飲みほしたもの。

シュガーフリー? なにそれ。甘いんだったら、シュガーと名乗れシュガーと! 
と憤る私は、「甘いんだけど、太らない」を歌うケミカルなシュガーが大嫌い。
でも、この言葉は使える。「ジェンダーフリー」それは、甘いんだけど太らない砂糖と同じ。オンナなんだけど、差別されない。これを標語にフェミとして戦おう! ええ。女性センターが「ジェンダーフリー」とか言ってた時は、「あら? 流用?」とか思ったもん。

でも。世で言う「ジェンダーフリー」とは、オトコらしさオンナらしさから自由になろう! というものでした。オンナを差別するな! オンナだからと言って差別するな! という怒りが、「あなたも、自分らしく生きましょう。イエース! ピース!」な自己啓発系の言葉になってしまったのは、本当に残念(って、私に権限があるわけじゃないが)。まぁ。ジェンダー=オンナらしさ・オトコらしさ から自由になろう! というような簡単な図式だったから、「ジェンダーフリー」って言葉は広まったのかもしれないけれど。

え? 広まった? 思わず、広まった、と書いてしまいましたが、いったいどこで広まってるっていうんでしょう。たぶん先日「正論」を読んだから、そんな気分になっているのかも。正論市場(敢えて)ったら、世の中はジェンダーフリーという危険な思想に満ちている。早い内に手を打たないと大変なことになる。という前提で記事を書いているので。フェミが広めた(と言っている)ジェンダーフリー思想に世の中のバカ女はみんな影響を受けている、と、繰り返し繰り返し吠えているので。
でも、本当にそうなの?

ちなみに、私は最近、会う友人、友人に、「ジェンダーフリーってなに?」って聞いてます。「バイブガールズ」(LPCで発行している)のコーナー100人に聞きましたで、「ジェンダーフリーって何?」って聞くことにしたからなんだけど。これがなかなか面白い。「え? なにそれ?」とふつーに返す人もいれば、「薬の名前か?」とか「飲み物?」とか言う人もいる。フェミを自称する私が聞くことで「試すの?」と構える人もいれば、「何でそんなことを聞くのだ」と怒り出す人も。面白いのは、まるで学術論文のような長文を返してくる人もけっこういること。笑っちゃいけませんね。

知らない人は知らない人なりに。知っている人は知っている人なりに。「ジェンダーフリー」って言葉を、慎重に取り扱おうとしているのを感じたんでした。「ジェンダーフリーは危険な思想」って言い切っちゃうバカに思われたくないから、「ジェンダーフリー」を客観的に、理性的に定義しようと、頑張る・・・というか。で。たくさんの人に「ジェンダーフリーって?」を聞いたけれど、正論市場が懸念しているように、「ジェンダーフリー思想」を信奉している人、なんてものは出会いませんでした。

よくフェミは、隣の運動を指をくわえてみています。
正論や産経の売れ行きがいいと聞けば、保守論客の勉強熱心さに学ばなくちゃ、私たちも敵を知らなくちゃ! と反省したり。
金持ちインテリ右翼が優勢となれば、私たちも貧乏くさい左翼運動じゃないってことをアピールしなくちゃ! とか言ったり。
レズビアン&ゲイパレードや映画祭に触れては、「私たちも、格好良くパレードしなくちゃ!」「面白い文化活動やらなくちゃ!」と触発されたり。

そう。フェミには「私たちは嫌われている」という自意識がある。「私たちはかっこわるい」「私たちは受け入れられない」という自意識がある。だからなのか。正論市場で、まるでフェミが世の中の女の意識を変え、まるでフェミが世の中を改革し、まるでフェミが世の中を悪くしている! とか言われると、「え〜! ほんとう? うっそー、私たちって、すっごーい力もっち〜!」という気分になってしまうというものでしょう。正論市場だけで、イキイキと力を持つフェミ。幻のフェミ。バカにされるのに慣れていればこそ、こんなに持ち上げられてどうしようぅ。意味もなくくねくねしちゃいそうです。

正論市場の人々に「安心してよ、フェミなんて力ないし。ジェンダーフリーなんて浸透してないからさ」と言いたいわけじゃないのだけれど。フェミに「おい、がんばれよ、オレ達、押されぎみだぜ。ふぇみん(フェミ系新聞)や家族(フェミ系新聞)、ジョジョ企画(フェミ系会社)の売り上げのばそうぜ!」とかはっぱをかけたいわけじゃないのだけれど。

なんちゅーか。「ジェンダーフリー」って言葉が正論市場で「一人歩き」をしているのを見て、なんだか不思議な気持ちなんだもん。
だって、誰も戦ってないし。「ジェンダーフリー」の定義は、そうではありません、正しくはこういうことですがな、とか応戦しているフェミがいないってことは、フェミのみなさんが、正論市場の「ジェンダーフリーバッシング」を、バカ、と思っているからでしょう? 同じ土俵に降りては負けだ、って思っているからでしょう? そんなもんににかかずらてなんかいられない。やること、他にいっぱいあるからでしょう。

私、最近、田嶋陽子ってすごいと思うようになった。
以前、フェミ友が「田嶋陽子のすごいのは、ブスって言った男に、バカって言い返していいってことを教えてくれたこと」と言っていたのだが、その通りだ、とも思うようになった。
バカと同じ土俵で戦うとバカになるとフェミは信じてきたわけだけど、すると、フェミは今、戦えないんだもん。頭のいい男に対して、理論武装するだけが、フェミだったワケじゃない。正論市場にいる暴言を吐くバカオヤジとぶつかるのが、会社に勤める女なら、社会で生きる女なら、日常なんだもん。

と言いつつ。正論市場かぁ〜。なんでこんなのにさかもと未明さん、書いてるのかなぁ、と遠い目で言いたくもなるけど。
さぁ、あなたならどうしますか?
バカな男にハゲと言って「あーたのレベルはこの程度よ」と笑うか。
バカな男をくぐりぬけ、頭のいい人としかつき合わない道を選ぶか。
バカな男をバカな男には分からない高度な理論で論破することを悦びとするか。
フェミの闘い方はいかに?

ちなみに、さかもと未明さん。21日土曜日、イベントをやるらしいです。「ジェンダーフリー」をテーマにした男と女の愛の物語。さかもと未明さんは9月号正論でこうおっしゃっている。
「フェミニズム的な考えもよいだろうが、現代のようにフェミニズムばかりが主流を占めるのは間違いなく危険だ。」
そんな折り知り合いに、フェミってやつらは、
「長年、演劇や芸術といった文化活動を通じてふフェミニズムを浸透させてきた。」と脅され、ここは保守はも頑張らなくっちゃと忠告を受け、アンチ・ジェンダーフリーイベントをやることにしたんだって。

「反・ジェンダーフリー」に熱心な議員の協力やらやらもあったらしく、大きな舞台で、楽しいイベントをやることになりそうです(って宣伝してどーする)。正論市場でまじめに論じるだけじゃなくて、楽しく、華やかなイベントをやって、若者を取り込んでいかなくってはね! という長期を見据えたイベントのようですよ。さかもと未明さんは言う。
「楽しく華やかなイベントの演出などで危険な思想を浸透させていくフェミニストたちの手法から学ぶことも多いと思う」と。

そんなフェミ、いないっつーの! とつっこみを入れていたら、ラブピースクラブのイベントに数度出演してくれていた、かっこいー女「エミ・エレオノーラ」さんがさかもと未明さんのイベントに出演することが分かってしまった。あっら〜、楽しく華やかなイベントの演出で危険な思想をばらなくフェミってアタクシのこと〜!? ほほほのほ。
エミさん・・・。バイブの歌つくってくれたのに。バイブの歌、歌ってくれたのに。二丁目の女神だったのに。くー。

ま。そんなわけで。お時間のある方、観に行ってきて! 報告よろしくねん。
私はその日、田嶋陽子さんと初トークショーをすることになっているんでした。田嶋フェミを知ってこよっと! @伊豆は友だち村。泊まりがけで、危険な思想を浸透させるのでご用心。興味のある方いらしてねん。


北原みのり プロフィール

北原みのりプロフィール ラブピースクラブ代表
1970年11月24日神奈川県生まれ千葉県育ち
津田梅子に憧れて、津田梅子のお墓を参る高校時代。津田塾では性教育の卒論を書き、その後、日本女子大の大学院に進む。すぐに挫折して、フリーのライターになる。95年、友人たちとインターネットHP制作会社 有限会社ユミット を立ち上げる。会社の経営をしつつ、ずっとずっと関心のあったエロとフェミの関連のある仕事「マンコ持ちのバイブ屋」を発見。1996年、日本で初めて、女性が経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。エロ系フェミニストとして活躍中。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社2000年)ほか多数。
北原みのりブログhttp://www.onnamedia.com/kitahara
北原DJ婆星http://www.bababoshi.com


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