冒頭では、塔の起源としてのバベルの塔と仏塔を取り上げます。次に、近代都市の塔の誕生前史として、江戸の眺望から明治・文明開化期への変化を示し、そしてメインに、20世紀という新しい時代を迎えた3つの都市-パリ・東京・大阪に生まれた、エッフェル塔、凌雲閣、初代通天閣の3つの塔をご紹介します。さらに、戦後高度経済成長期に、新たな時代の塔として生まれた東京タワー、二代通天閣と続きます。オルセー美術館をはじめ、パリから貴重なエッフェル塔関係資料48点が出展されるほか、喜多川周之コレクションなど江戸東京博物館の館蔵資料を中心に約380件の展示を予定しています。
※東京都江戸東京博物館では、特別展「ザ・タワー ~都市と塔のものがたり~」の開催にあわせて、2012年2月21日(火)から5月20日(日)まで、常設展示室内にて、特集展示「太陽の塔 黄金の顔」を開催いたします。 詳細はこちら
都市に建つ塔の起源を考えると、やはり旧約聖書に登場するバベルの塔と、三重塔や五重塔といった仏塔にたどり着きます。そもそも「塔」という言葉も、仏舎利(釈迦の遺骨)を納める墓であった「ストゥーパ」(サンスクリット語)を語源としています。洋の東西において、多くの塔は、教会や寺院といった信仰の空間にあり、祈りの対象でした。ここでは、17世紀に描かれたバベルの塔の銅版画や、薬師寺東塔、谷中天王寺の五重塔など、仏塔の関係資料をご紹介します。
「薬師寺三層裳階付大塔雛形」
関野貞・土屋純一・藤本民次郎制作 明治33年頃(1900)
木製着色 東京藝術大学大学美術館蔵
高い建物のなかった江戸では、人々は遠く霊峰富士を臨み、自然の地形を利用して江戸の風景を楽しんでいました。明治になると建物の高さ制限が解かれ、第一国立銀行などの洋風高楼建築が建てられました。都市の眺望を楽しみたいという人々の思いは、やがて、愛宕塔や富士山縦覧場などの眺望を楽しむための展望施設を生むことになります。
「江戸一目図屏風」
鍬形蕙斎画 文化6年(1809) 紙本墨画淡彩 六曲一隻
津山郷土博物館蔵(岡山県重要文化財)
「東京名所 愛宕山」
渡邊忠久画・版
明治23年(1890)7月24日 石版画
江戸東京博物館蔵
「俳優出世冨士登山寿語六」
歌川国貞(3代)画
明治20年(1887) 木版双六
江戸東京博物館蔵
1889年にパリで開かれた万国博覧会で建造されたエッフェル塔は、300メートルという高さへ挑戦した新しい「都市の塔」であり、「近代」という時代の到来も告げるものでした。開国維新を経て、急速な近代化の過程にあった日本でも、東と西の二つの都市に、時を経ずして眺望を楽しむ、塔の誕生を見ることとなります。ここでは、エッフェル塔とともに、東京・浅草の凌雲閣(明治23年(1890))、大阪・新世界の通天閣(明治45年(1912))の、3つの塔をご紹介します。
エッフェル塔のサーチライトジョルジュ・ギャレン画
1889年(明治22) リトグラフ オルセー美術館蔵
Embrasement de la Tour Eiffel,Georges GAREN,
engraving in colours, ARO1981-944(a)Paris,musée d'Orsay,
gift from Ms Solange Granet,,Mrs Bernard Granet and her children,
descendants of Gustave Eiffel,1981(C) RMN (Musée d'Orsay) /
René-Gabriel Ojéda distributed by AMF-OADIS
「浅草公園凌雲閣登覧寿語六」
歌川国貞(3代)画
明治23年(1890)木版双六
江戸東京博物館蔵
「(大阪名勝)新世界ルナパークより通天閣を望む」
新世界開設式記念絵葉書
明治45年(1912)7月3日 絵葉書
江戸東京博物館
塔は時代を象徴し、時代の語り部となります。戦後復興の中で、新しい時代の象徴として、東京と大阪に二つの塔が生まれました。昭和33年(1958)に開業した東京タワーは、テレビの時代を迎えた日本で、電波を送る「実用の塔」でしたが、エッフェル塔を抜く世界一の高さを誇り、東京を美しく彩る「都市の塔」となりました。また、昭和18年(1943)に火災が原因で解体された大阪の通天閣は、街のシンボルを取り戻そうとする人々の熱意により昭和31年(1956)に再建されました。
「寒月を背に大東京の世空に輝く
東京タワーを麻布の高台より仰ぐ」
昭和33年~40年代 絵葉書 江戸東京博物館蔵
「大阪名所 通天閣 鉄骨が作る摩天楼の構成」
昭和31年~40年代 絵葉書 江戸東京博物館蔵
平成24年(2012)春、東京に、600メートルを優に超える世界一高いタワー、東京スカイツリー®が完成します。この新しい塔は、これからたくさんの人々と出会い、新しいものがたりを積み重ねてゆくでしょう。
本展、音声ガイドのナビゲーターは、『地球テレビ エル・ムンド』(NHK-BS1)『ぶらぶら美術博物館』(BS日テレ)など数多くのテレビ番組にご出演されている、評論家、山田五郎さんにお願いしました。
展示作品の解説とともに、都市と塔にまつわるうんちくを語っていただきます。ぜひご利用ください!
音声ガイド利用料:500円(税込)
山田五郎プロフィール
- 山田五郎 やまだ・ごろう(編集者・評論家)
- 1958年 東京都生まれ
上智大学文学部在学中にオーストリア・ザルツブルク大学に1年間遊学し西洋美術史を学ぶ。
卒業後、㈱講談社に入社『HOT-Dog PRESS』編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。
現在は時計、ファッション、西洋美術、街づくり、など幅広い分野で講演、執筆活動を続けている。
- 著者
- 『百万人のお尻学』(講談社+α文庫)
『20世紀少年白書』(世界文化社)
『山田五郎のマニア解体新書』(講談社)
『知識ゼロからの西洋絵画入門』(幻冬舎)
『純情の男飯』(講談社)
『知識ゼロからの西洋絵画史入門』(幻冬舎)
など
- 雑誌
- 『世界の腕時計』(ワールドフォトプレス)
『月刊一枚の絵』(一枚の絵(㈱)
『銀座百点』(銀座百店会)
他に好評連載中。
- TV
- 『出没!アド街ック天国』(テレビ東京)
『PON』(日本テレビ)
『ぶらぶら美術博物館』(BS日テレ)
『地球テレビ エル・ムンド』(NHK-BS1)
『親父同志』(モンド)
『山田五郎のだべり喫茶』(ファミリー劇場)他レギュラー出演中。
- ラジオ
- 『東京REMIX 族』(J-WAVE)
『デイ・キャッチ』(TBSラジオ)
他レギュラー出演中。
Embrasement de la Tour Eiffel
Georges Garen画 1889年(明治22)オルセー美術館蔵
Paris, musée d'Orsay, gift from Ms Salange Granet, Mrs Bernard Granet and her children, descendants of Gustave Eiffel, 1981
(C)RMN (Musée d'Orsay) / René-Gabriel Ojéda distributed by AMF-OADIS