経済

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AIJ企業年金消失:証券監視委が強制調査 契約偽計容疑

 投資顧問会社「AIJ投資顧問」(東京都中央区)の年金消失問題で証券取引等監視委員会は23日午前、顧客を欺いて契約を交わしたとして金融商品取引法違反(契約の偽計)容疑で同社本社などの強制調査に乗り出した。強制調査の対象は、ほかに関連のアイティーエム証券(ITM、東京都中央区)や幹部宅など数カ所。巨額年金消失問題は刑事告発に向け動き出した。

 ◇金融庁が登録取り消し

 監視委によると、同容疑での調査対象者はAIJの浅川和彦社長(59)と高橋成子取締役(52)。浅川社長が主導し高橋取締役が事務担当だったという。監視委は同日までに行政処分担当の証券検査課がAIJとITMの検査を終え、今後は刑事告発担当の特別調査課が調べを進める。

 また監視委から行政処分の勧告を受けた金融庁は同日、金融商品取引法違反(運用報告書の虚偽記載・虚偽の勧誘)の疑いなどに基づきAIJの投資運用会社としての登録を取り消す処分を出した。ITMにも虚偽の運用実態を知りえた状況で商品販売をしていたなどとして、同法に基づき制度上最長の6カ月の業務停止を命令。その上で、両社に顧客の資産を保全するよう業務改善命令を出した。

 監視委によると、AIJは03年から自社の判断に基づき資産運用が可能な「投資一任契約」を年金基金側と結び、年金資産を運用。03年3月期~昨年3月期までに1458億円を受託したが、08年のリーマン・ショックなどで毎年運用に失敗、金融派生商品(デリバティブ)取引で1092億円を消失させた。こうした損失結果をAIJは顧客に隠したまま高利回りをうたい集金を続行。集めた資産は損失の補填(ほてん)や払い戻しに充て、販売した金融商品の価額も水増ししていたことから、投資一任契約業者に禁じた「契約の偽計」容疑に当たると判断した。

 こうした取引では運用利回りなどを確認する管理会社や商品を販売する証券会社が投資顧問会社から独立していることが前提とされるが、AIJの取引に関与した管理会社「エイム・インベストメント・アドバイザーズ」の役員はAIJの浅川社長が兼ね、販売元のITMも資本提携関係があり事実上一体化。監査法人による監査報告も3者のみで確認し、顧客に開示を拒否していた。

 AIJの顧客向け資料では11年3月期までに2090億円を受託したとされていたが、監視委の調べでは残った資産は251億円。これには未公開株などが含まれ、現金は81億円しかなかった。【川名壮志、田所柳子】

毎日新聞 2012年3月23日 東京夕刊

 

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