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うなぎが食べられなくなる?

3月22日 20時25分

日本食の代表格、うなぎ。
その稚魚であるシラスウナギの、深刻な不漁が続いています。
今の状態が続けば、近い将来、うなぎは簡単には食べられないものになりかねません。
こうした事態を打開しようと、22日、国が対策会議を開きました。
うなぎを手軽に食べられる日は、来るのでしょうか?

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歴史的な不漁

私たちが口にするうなぎのほとんどは、養殖ものですが、養殖で育てるのは天然のシラスウナギです。
その国内の漁獲量は、昭和30年代には200トンを超えていましたが、去年は9.5トンと20分の1に激減しました。

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このため、取り引き価格は跳ね上がり、平成18年の1キロ当たり26万6000円から、去年は3倍以上の86万5000円にまで高騰しています。
水産庁によりますと、ことしはさらに拍車がかかり、1キロ200万円を超える高値で取り引きされているということです。
また、中国や台湾などからの輸入も、シラスウナギの減少や国内向けの需要増加などで減る傾向にあって、うなぎの供給は極めて厳しい状態です。

不漁の原因は?

この不漁の原因について、専門家は、エルニーニョ現象で海流が変わり、日本近海に来るシラスウナギが減っていることや乱獲が原因とみています。
うなぎの生態に詳しい東京大学の木村伸吾教授も「親の減少で、産卵数も大きく落ち込んでいるとみられることから、シラスウナギの不漁は今後もしばらく続くのではないか」と話しています。

養殖の産地では

漁獲の減少により、国内の養殖業者はシラスウナギの価格の高騰に直面しています。
年間1200トンのうなぎを養殖している鹿児島県の水産会社では、去年、1匹当たり200円だった仕入れ値が、ことしは410円と2倍以上に上昇しました。

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出荷価格も引き上げざるを得ないと考えていますが、この会社では、養殖に薬を使わない独自の方法で安全性を高めることで、値上げへの理解を得ようとしています。
この会社の幹部は、「高い単価に見合う商品を作っておいしいものを作ることしかわれわれのようなメーカーが生き残れる道はないと考えている」と話しています。
養殖業者でつくる業界団体の会長も「現在は、養殖業が継続できるかどうかという状態。資源管理を行うなど資源が増える形を生み出してもらいたい」と話していました。

うなぎ屋さんも四苦八苦

私たちの身近にあるうなぎ屋さんでも影響は深刻です。
東京・目黒にある創業50年を超えるうなぎ屋では、仕入れ値が去年の2倍近くまで上がったため、去年7月とことし2月の2度にわたって値上げに踏み切りました。
この結果、去年は2500円としていた「上」の「うな重定食」を、ことしは3000円で販売しているほか、「かば焼き」を1100円から1500円に値上げするなどしています。

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店を訪れた女性は「母がうなぎが好きでよく買いに来ますが、値上げの影響で買いに来る回数を減らしています」と話していました。
店主は「ここまで仕入れ値が上がるのは異常としかいいようがない状況だと思っています。繰り返し値上げをして、お客さんを裏切るようなことになっています。このままうなぎ屋を続けられるのかと心配になってしまいます」と話しています。

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有効な対策は?

こうしたことを受けて開かれた22日の水産庁の対策会議。
国内の養殖業者の団体や自治体の担当者などおよそ80人が参加しました。

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会議では、卵から育てる完全人工養殖の技術は、稚魚まで育つ確率が4.2%余りと低く、商業化に課題があることが報告されました。
農林水産省は年間1万匹を目標にシラスウナギを育てる技術開発に取り組むとしていますが、会議では、直ちに有効な対策を打ち出すことは難しいとして、引き続き検討していくことを決めるにとどまりました。
この深刻な状況の打開策について、東京大学の木村伸吾教授は「今後10年程度、天然うなぎの漁を禁止したりシラスウナギの捕獲を制限したりして、資源の回復を図るべきだ。ウナギの漁獲量については、正確なデータが乏しいので、まずは水産庁や漁業者、養殖業者が協力して正確なデータを集める必要がある」としています。

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そして、「かつて、うなぎはハレの日のごちそうだったが今は、いつでも安く食べられればいいと考えられている。食文化を守るためにはこうした意識を改めることも必要ではないか」とわたしたち自身の意識改革の必要性も指摘しています。