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【コラム 私は見た!】

白鵬の差し身に関して考える

2012年3月24日

 同じ相手に続けて負けたり、前回の対戦の記憶が生々しく生きている中で、同じ相手に敗戦の立場に追いやられるのは、勝負に生きている人間にとって、やはり避けたいものであろう。

 そんなことは人に言われるまでもないことだと考えているだろうが、白鵬が稀勢の里にまた負けた。記録を語ってくれる冷たい数字は、二人の対戦成績が24勝対8勝で、横綱の成績としてはかなり高率の敗北であることを示している。

 それもそうだが、いつか相撲ファンの間には、白鵬はこの大関には弱いという評判が定着してしまっている。

 こういう定評には一度、勝負の世界で根を下ろしてしまうと、根絶やしにするのが大変面倒なものなのである。半ば余計なことだが、これまでのいわゆる苦手に対戦した力士の成績を思い浮かべても、いとも簡単に敗戦に追いやられていることに驚かされる。

 私は「私は見た」欄にこんなことを書いた。3月17日付だから、白鵬はまだ無敗で先頭を走っていたときのことである。

 白鵬の差し手の問題を取り上げたときで、かなり厳しいことを遠慮無く書いたものである。

 『力士としての能力に関して、欠けるところがない白鵬なのだが、唯一差し身に関しては少々疑問符がつくのではなかろうか…』『私は専門家ではないので、開き直って白鵬の差し身論をやるつもりはない。しかし、白鵬が敗れた相撲を振り返ってみると、陰に陽に差し手の問題が微妙なことに多くの人が気づかれるのではなかろうか。私は先場所の白鵬の終盤の成績の崩れた、最大の原因はこの辺にあるのではないかと考えている…』

 私なりに、この差し身に関係して、白鵬の弱点が露出してしまうと書いたのだが、13日目の敗北は厳しいおっつけだった。おっつけと差し身は違うが、白鵬を攻めるのに、上半身から活路を開こうという方法には、大関の苦しんだ跡が脈々と感じとれる。

 優勝争いに新しい展開があって、鶴竜が先頭に出てきた。いつかはこういう形で、競争相手に置いてきぼりを見せる手ごわい力士だと思っていたが、数多い優勝争いの中でも特筆すべき力士が、いよいよ登場したようなことだと、私は受け取っている。

 しかも、御本人はどう考えているかは別にして、あと1勝で到達する大関の座がいかにも似合いそうな力士である。 (作家)

 

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