ある朝、ペンシルベニア州南部の牧場で、酪農家が鳴いている牛たちの様子を見ようと外に出たところ、ガス臭さに意識を失いそうになった。
1頭の牛が倒れ、けいれんを起こしていた。数日後には子牛が生死の境をさまよい、結局死んでしまったという。
米国東部に広がるマーセラスシェール(頁岩(けつがん)層)をめぐって、何か恐ろしいことが起こっているようだ。
◆募る酪農家の不安
マーセラスシェールに存在する天然ガスの掘削に使われるハイドロリック・フラクチャリング(水圧破砕法)はフラッキングとも呼ばれ、大量の水や化学物質を注入して内部のガスを抽出する掘削方法だ。この掘削法が環境を損ない、地下水を汚染するとして問題になっている。多くが事例証拠ではあるが、動物が被害を受けているという。
獣医のミシェル・バンバーガー氏と、米コーネル大学の獣医学教授、ロバート・オズワルド氏の研究が「ニュー・ソリューションズ(New Solutions:A Journal of Environmental and Occupational Health Policy)」に掲載された。マーセラスシェールが広がる6州の酪農家やペット所有者のケーススタディーを行ったところ、牛の突然死が多数報告されているほか、馬、猫、犬などの動物で生殖機能障害や神経障害がみられた。