平成15年10月21日、有栖川宮を名乗り不正に金銭を得たとして北野康行容疑者(41)、坂本晴美容疑者(45)、並びに番組企画会社経営楠信也(42)の三名が警視庁に逮捕されました。この件についてテレビ朝日、朝日新聞から取材の要請があり、10月3日(金)と10月21日(金)の二回にわたってニュースステーションで私のコメントが放送されました。インタビューで放送されなかった部分もあるため、以下に詳細を記すことにします。
記者 「この事件をどのように受け止めていますか?」
竹田 「実は私の友人がこの事件で問題になっている結婚式に招かれていて、当時その友人からこの不可解な結婚式について聞かされたときに非常に驚いたことをよく覚えています。皇室を冒涜する事件だと思います。」
記者 「皇室関係者を語る人が現れた場合、本物と偽者をどのように見分けたらよいのか教えてください。」
竹田 「皇族というのは法律で定められた身分であり、六法全書に収められている『皇室典範』に詳細に規定されています。現在六宮家存在しており、それ以外は皇族ではありません。また、旧皇族や祭祀を継承しているなどどいって近寄ってくる人がいた場合、それは間違いなく偽者だと思って間違いはありません。本当に流れを受け継ぐ人であれば、自らをそのようにアピールして、しかもそれをビジネスのネタに利用するようなことはするはずがありません。」
記者 「以前竹田さんの回りに似たような事件はありましたか?」
竹田 「周辺ではいろいろな話を聞いています。しかし私の前に直接当人が現れたことはありません。私の目の前に現れたらすぐニセであることがばれますから。」
記者 「なぜ犯人は『有栖川宮』を選んだのでしょうか?」
竹田 「二つ理由があると思います。ひとつは『有栖川宮記念公園』という有名な公園があり、そのイメージを利用したということです。この公園が余りに有名であるため、『有栖川宮』が現存していると思っている人も多いことでしょう。そして第二に、なんと言っても『有栖川宮』は幕末に大活躍した宮様であり、日本史を勉強した人であれば強い印象を持っているからです。ですから犯人は意図を持って『有栖川宮』という名前を利用したと考えられます。」
記者 「犯人は『有栖川宮の祭祀を継ぐように言われた』と説明しているようですが、そのようなことは起こりえるのでしょうか。」
竹田 「まずあり得ないと考えていいです。まず前例がありません。そして、親族以外に祭祀を継承させる理由がない。しかも、有栖川威仁親王の御孫様でいらっしゃる高松宮宣仁親王妃喜久子殿下を差し置いて第三者に祭祀を継がせるのは、理論的にも構造的にもありえない話です。」
記者 「宮家というのはどのような理由で存在しているのでしょうか。」
竹田 「江戸時代までの制度と現在の制度では異なっています。現在は六つの宮家が存在しており、天皇陛下の執務を補佐する役目以外に、天皇家にいざということが起きた場合に皇位を継承することができる位置にあり、そのことは『皇室典範』にも規定されています。今回の事件で問題になっている『有栖川宮』というのは、江戸時代を通じて存在していた四つの世襲親王家の一つにあたります。世襲親王家というのはやはり天皇家に皇位の継承者がいない場合に皇統を途絶えさせないために設置された経緯があります。光格天皇は世襲親王家の一つである閑院宮から即位した天皇であり、実際に機能して皇統を守った前例もあります。」
記者 「犯人は『有栖川宮識仁(サトヒト)親王』を名乗っているのですがなにか気づくことはありますか?」
竹田 「皇族男子は皆様天皇陛下から『仁(ヒト)』のつく御名、つまり一般に言う名前を賜ることになっています。したがって皇族の流れを受け継ぐ者であればその尊い名前を使うことは余りに恐れ多いために憚られるものであり、犯人のように自ら『仁』の付く名前を名乗るとなればそれだけで偽者であると指摘できます。そもそも幕末までは天皇の代替わりがある度に、新たに即位された天皇の御名に近い名前の個人や地名は、似た名前を持つことが畏れ多いということで、その名前を呼び変える『敬避』という習慣があったほどです。その習慣を知らずに自らを『識仁』と称するところが、余りに無知と言うか、浅はかではないでしょうか。」