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ストーカー殺人検証、悔やむ3県警「命守れず」

ストーカー殺人事件の検証結果を公表する千葉県警の安達課長(中央)。左は長崎県警の池田課長、右は三重県警の栃木課長(5日午後5時43分、長崎市の長崎県警本部で)=足立浩史撮影

 「命を守れず痛恨の極みです」。女性2人の命が奪われた長崎県西海市のストーカー殺人事件。千葉、長崎、三重県警の捜査幹部は5日、長崎市で記者会見し、深々と頭を下げた。意識の甘さや県警間の連携不足など、検証で浮かび上がった数々の問題点に、遺族らは「これでは救えるものも救えなかった」とやりきれない思いを募らせた。

 午後5時40分、長崎県警本部で始まった会見には、3県警の生活安全部の担当課長が顔をそろえた。

 「お二人の尊い命を奪われ、痛ましい結果を招いた。ご遺族に心からお悔やみ申し上げます」。まず千葉県警の安達泉己・生活安全総務課長が謝罪した。

 報道陣からは、昨年12月6日、傷害事件の被害届提出のため習志野署を訪れた山下誠さん(58)と三女(23)に「1週間待ってほしい」と応対したことについて、矢継ぎ早に質問が飛んだ。

 安達課長は、ほかの事件の対応に追われていたと釈明した上で、「もう少し切迫感を感じて事情聴取を早めていれば、このようなことにならなかった」と苦渋の表情を浮かべた。長崎県警の池田良文・生活安全企画課長は「3県警の連携、情報の共有が不足したのは大変残念。遺族に対して申し訳ない気持ちでいっぱい」と語った。

 事件の2日前、筒井郷太容疑者(27)(殺人容疑などで逮捕、鑑定留置中)が三重県桑名市の自宅を飛び出したことを千葉、三重両県警が知りながら、長崎県警に伝えなかった点について、安達課長は「筒井容疑者の目的は千葉にいる三女に向けられていると思い、すぐに(実家の)長崎に行くとは思わなかった」と釈明。三重県警の栃木新一・生活安全企画課長は「対応した署員が筒井容疑者は危険人物だと把握していなかった」と述べた。

 報道陣から「連絡が入っていたら、どんな対応ができたか」と聞かれた池田課長は、「(山下さん宅の)警戒を強化できた」と回答。隣席の安達課長は、険しい表情で小さくうなずくだけだった。

 また、山下さんから筒井容疑者による脅迫メールの相談を受けながら事件化しなかったことについて、安達課長は「(筒井容疑者の携帯電話を調べて)脅迫メールを確認していれば、ストーカー行為として認定できた。十分捜査していなかった」と、対応のまずさを認めた。

 最後は3人がそろって立ち上がり、一礼した。

 

 ◆「救えるものも救えなかった」山下さん手記 

 山下さんは5日、代理人の弁護士を通じて手記を公表した。主な内容は以下のとおり。

       ◇

 3県警から質問に対する回答と検証結果の説明を受けました。3県警からの回答については「自分は、その都度、言われたとおりにそれぞれの窓口に相談し、電話をするということを繰り返してきたのに、3県警の間で、連携、報告が全くできていなかったのか。これでは救えるものも救えなかった」とやりきれない気持ちになりました。

 検証結果については、3県警で詳細な検証をした上で、本件事件での問題点や再発防止策が認識され、「まずは一歩、前進した」と思っています。

 私としては、検証結果に記載された再発防止策が全国で運用されていくことを強く望んでいます。問題点や改善すべき点を明らかにするだけではなく、再発防止策が実際に運用されていくことが重要です。二度と今回のような事件が起こらないことを切望します。

2012年3月6日  読売新聞)
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