私が一番最初に、民主党議員が嘘つきだと思ったのは、まだ今ほど小沢色が強くなかった頃、番組に出演した○口一○議員がこう発言した時です。ちなみに○口一○議員、分かりますか?記号が並んでいるようですが、伏字は最初と最後の○だけで、四角に見えるのは漢字で、その次の横棒に見えるのも漢字です。分かりましたか?そうです、その人です。
民主党は岡田氏が代表だった時代に、「消費税を3%上げさせて欲しい。その金で、すべてのお年寄りに7万円の最低保障年金を支給する」と公約に掲げて選挙を戦い、小泉ブームのチルドレンたちに惨敗しました。
この時、○口一○さんに「私の試算では、年寄全員に七万円配るのに3%では無理だ」と言ったところ、「絶対に出来るんです。大丈夫です」と言い切りました。勿論何にも根拠は示されません。
その時「こいつ嘘つきだな」と確信したのですが、その後民主党は小沢代表の時代に入り、あろうことか「消費税は上げなくても、7万円の最低保証年金が支給できます」と選挙で言い始めたんです。安倍政権は、この嘘マニフェストの犠牲になって参議院選挙で負け、総理の腹痛も相俟って崩壊してしまいます。その時、やはり○口一○さんに、「3%でも難しいのに、税金上げずに出来るわけないでしょう?」と聞くと、なんと「絶対にできます。出来ないというアナタは財務省に騙されてるんです」なんてことを言い始めます。
あのね、それも言うなら厚生労働省でしょう。そして、ついに政権交代となる二年半前の選挙で民主党は、年金問題だけでなく、「ありとあらゆる国民の関心事が特別会計と合わせて250兆円の予算を組み替えて実現する」という、途方もない嘘をつき始めたんです。
○口一○さんはまたも番組に出演して、「絶対にできます。日本の予算は特別会計と合わせると250兆円もあるんです。これを組み替えれば、十兆、二十兆なんてすぐ出るんです。」とそれでなくても丸い目ん玉をぐるぐる回しながら力説したんです。
私、確信しました。「こいつ、悪魔に魂売ったな」って。まあ、そんな嘘マニフェストに騙される国民がアホなんですが、いまだに民主党の中に、この嘘マニフェスト回帰を平然と口にする輩がいるのには、ホント吐き気がします。
一応、現政権を担当している野田グループなどは、その「嘘マニフェスト」を主張する勢力と一線を引いている様には見えます。ところが、です。今回の予算編成を見ると、「こいつらもやっぱり、嘘つきの一味か」と思わざるを得ないんです。
どうしてそう思うか?それは、本当は来年度予算の中で借金が占める割合はもっとずっと多いのに、交付国債なんていう姑息な手段を使って、見かけの借金の額を抑えようとしたことです。
政府はお金が足りなくなると、国債を発行して借金で政策資金を調達します。そもそもこれは、財政法第四条で厳禁されている違法行為なんですが、単年度に限って有効な特別法(公債特例法)を制定する手法でお金を工面するこのやり方を、
オイルショックの後くらいからずっと続けているんです。で、今まで財務省理財局は、主に国内の銀行・生損保に国債を買わせ、そこで得た金を使って政策を実現してきました。
ところが、来年度予算で年寄に年金を支払うために政府は、市中で借金する代わりに、年金会計に交付国債なるものを渡すことでつじつま合わせようとしているんです。
交付国債を貰った年金会計は、その金額だけ年金積立金を取り崩して、高齢者に支払います。こうすると、一見、年金会計自体は痛みません。だって、取り崩す分は、政府に国債という支払証明書を貰ってるんですから。
ところが将来、年金会計の痛みが進んで積立金がなくなり、この交付国債で年金を支払わなくてはいけない時代が来た時どうなるか。この時、年金は現金で払わなくてはいけませんから、年金会計は国に、国債の現金化を求めることになります。
この時点で国は実際の現金支払い義務が生じます。で、その年の予算から、来年度に発行した紙切れを現金化する予算をひねり出さなくてはならなくなるんです。
来年度予算で国が国債を発行して現金を作って年金会計に突っ込むと国の借金が増えてしまいますが、交付国債なるものを配っておけば、帳簿上で借金が表面化するのを先延ばしにすることが出来るんです。酷い話です。
勿論、年金積立金が底をつくまで交付国債がそのまま年金会計に留め置かれるんじゃなくて、「将来の消費税引き上げで償還する」という事は決まってますが、
それって逆に言うと「消費税上げないと、年金支払うお金が無くなっちゃうよ」と国民の脅迫材料に使われているという事なんです。
この交付国債という手法を、東電の賠償支払いのように「現在は支出金額が確定していない」というケースで使うなら、ある程度理解できますが、年金のように「金額も確定していて必ず必要になる費用」に使うのは無茶苦茶です。
こんなことをする理由はただ一つ、来年度の国債発行額を少なく見せるというただそれだけの理由です。
皆さん、こんなやり方に騙されちゃあだめです。この政権、嘘つきです。私が断言するんだから間違いありません。
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辛坊 治郎
読売テレビアナウンサー、理事・報道局解説委員長を経てフリージャーナリストに。大阪綜合研究所代表も務める。
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