大飯原発の安全性に一定の評価3月23日 22時38分
福井県にある関西電力大飯原子力発電所の「ストレステスト」について、国の原子力安全委員会は「福島第一原発の事故を踏まえて実施された緊急安全対策などの効果が示されたことは1つの重要なステップだ」などと一定の評価をする見解をまとめました。
原発の運転再開を判断する前提とされる「ストレステスト」で、安全委員会の見解がまとまるのは全国で初めてで、政府は今後、地元自治体の意向を踏まえて政治判断することになります。
「ストレステスト」は、定期検査中の原発の運転再開の判断にあたって政府が導入した新たな手続きで、設計の想定を超える地震や津波などに対し、各原発がどの程度安全に余裕を持っているか、電力会社の評価結果を原子力安全・保安院が審査し、最終的に原子力安全委員会が確認するものです。
原子力安全委員会は、23日、全国の原発で初めて関西電力大飯原発の3号機と4号機の「ストレステスト」の結果について、見解をまとめました。
まず、今回の確認結果については「何らかの基準に対する合否判定を目的とするものではない」として、安全委員会としては運転再開の是非とは切り離して判断したとしています。
そのうえで、保安院の行った審査内容について「福島第一原発の事故を踏まえて実施された緊急安全対策などの効果が示されたことは1つの重要なステップだ」などと一定の評価をする見解を示しました。
ストレステストを巡っては、原子力安全委員会がこれまでの審議の中で、今回の「1次評価」だけでは総合的な安全性の評価としては不十分で、「2次評価」まで行って、メルトダウンが起きたとしても大量の放射性物質の放出を防ぐ対策などを確認することが重要だと繰り返し指摘していました。
23日に示した見解の中でも2次評価を速やかに実施するよう求めています。
ただ、政府はあくまで「1次評価」で運転再開を判断するとしていて、今後は、地元自治体の意向を踏まえて政治判断することになりますが、安全委員会が「総合的な安全性の評価としては不十分」と指摘している中で、国が地元自治体などに対してどう分かりやすく説明するのかが問われることになりそうです。
斑目委員長“運転再開判断は保安院”
23日の原子力安全委員会の見解では、原発の運転再開に必要な安全性の確保ができているのか、明確な説明はありませんでした。
班目春樹委員長は、会議後の記者会見で、「われわれは、安全性の確認を求められているのではない。緊急安全対策によって安全性が高まっていることは認めるが、安全性は、総合的に見なければいけない。運転再開の判断は、安全委員会の役割ではなく、原子力安全・保安院が責任を持って行うべきだ」と述べました。
そのうえで、「世界的に見て、ストレステストと運転再開を結びつけているところはない。それを政治的な判断で行うことについて、意見を言うつもりはない。総合的な安全評価としては1次評価では不十分で、2次評価について速やかに実施してほしい」と述べました。
23日に安全委員会が示した見解は僅か8ページで、保安院が行った1次評価の審査結果を確認した内容についても、具体性に乏しく、抽象的な表現にとどまっています。
これについて班目委員長は、「分かりにくいという指摘もあるが、科学者として述べなければならないことはすべて述べた。今後は、保安院のほうでしっかり対応してほしい」と話し、安全委員会として必要な見解は出したという認識を示しました。
地元“ストレステストだけでは不十分”
福井県の西川一誠知事は「再稼働に対しては、これまでどおりの見解である」という1行だけの短いコメントを出しました。
運転再開の判断について、西川知事は、ストレステストのみでは不十分で、福島第一原発の事故の検証を踏まえた「暫定的な安全基準」を国が示す必要があるという考えをこれまでに示しています。
大飯原発のある福井県おおい町の時岡忍町長は「ストレステストはあくまで1つのステップであって、福島第一原発の事故の知見を踏まえた暫定的な安全基準が示されなければ、運転再開の議論の対象にはならず、先には進めない」と述べて、運転再開に向けては、ストレステストだけでは不十分だとする考えを改めて示しました。
そのうえで、国に対して福井県やおおい町が求めている安全基準とそれに基づく安全対策を速やかに示すよう求めました。
関電社長“政治判断見守る”
関西電力の八木誠社長は会見で、大飯原子力発電所のストレステストについて、「2次評価」を急ぐとともに運転再開に向けて政治判断を見守る考えを示しました。
この中で、八木社長は、国の原子力安全委員会が大飯原発のストレステストに一定の評価をする見解をまとめたことについて、「福島第一原発の事故を二度と起こさない決意の下、緊急安全対策を徹底的に行い、今回、1つの評価をいただいたと思う」と述べました。
そのうえで、国の原子力安全委員会がストレステストの「1次評価」だけでは安全性の評価は不十分だとして、「2次評価」の速やかな実施を求めたことについて、「原子力安全委員会の意見に真摯(しんし)に対応して、『2次評価』を進めていく」と述べ、「2次評価」の実施を急ぐ考えを示しました。
さらに、運転再開については「政治判断なのでその動向を注視していく」と述べ、政府の判断を見守る考えを示しました。
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