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がんの治療パターンが明らかに

3月21日 22時25分

籔内潤也記者

日本人の2人に1人がなるとされるがん。
ほとんどの人は、周りにがんになった人がいると思います。
がんになれば、どのような治療が行われるのか、全国の拠点病院で行われた治療内容のデータがまとまり、公表されました。
このデータの読み解き方について、科学文化部・医療担当の籔内潤也記者が解説します。

がん治療 全体像は?

がんの治療法として、思い浮かべるのは、どのようなものでしょうか?。
治療の効果が十分確認されているのは、手術と抗がん剤、それに放射線による治療の3つです。
最近は、それぞれ単独で行うだけでなく、手術と抗がん剤、場合によっては放射線も組み合わせて治療します。
しかし、実際には医療現場でどのような治療が行われているのか、まとまったデータはこれまでほとんどありませんでした。
実は、がん医療には患者がどれくらいいるのか集計したデータはありません。
今、全国で毎年70万人ががんになると言われていますが、あくまで推定です。
国のがん対策もこうした推定のデータに基づいて策定されています。

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そこで、国立がん研究センターは、各地でがん医療の中心的な役割を果たしている「がん診療連携拠点病院」で登録された患者データをがん対策に生かそうと、3年前から取りまとめています。

約50万人の治療データ

今回は全国370の拠点病院で、平成21年に初めてがんの治療を受けた患者およそ48万5000人のデータがまとめられています。
全国の6割以上の患者がカバーされているとみられます。

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今回、明らかになったデータの内容です。
まずは、男女別、年齢別、がんのできた場所別に患者数がそれぞれの病院ごと、都道府県ごとに示されています。
さらに、患者の半数を占める胃がんや大腸がん、肺がん、乳がん、それに肝臓がんの「5大がん」については、初めて病院ごとに進行度別の治療内容が明らかにされました。

治療のパターン明らかに

ここから何が分かるのでしょうか。
たとえば、胃がんと大腸がんの場合、初期の段階では患者の負担が少ないとされる内視鏡治療が、やや進行した段階では手術に抗がん剤を併用する治療法が普及してきていることが分かります。

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また、乳がんでは、手術と抗がん剤、それに放射線の3つの方法を組み合わせる治療が広く行われるようになってきていることが分かります。
一方で、こうした治療の実施が極端に少ない病院もあります。
がんの種類によっては、治療法は常に進歩していますが、進歩についていけない施設の存在がうかがえます。
国立がん研究センターの西本寛がん統計研究部長は「データが継続的に出るようになってきたので、それぞれの病院の強みや問題点が比べられるようになった。 病院の担当者が、治療内容をほかの病院と比べれば、治療の質の向上に役立てられると思う」と話しています。

集約化必要な小児がん治療

また今回初めて小児がんなど20歳未満のがん患者について、どこの病院にかかっているか住所別に示したデータも公表されました。
小児がんは、大人のがんに比べて患者が少なく、治療法が異なることもあって、対策が遅れていると指摘されています。
1年間に治療する患者が十数人と少ない病院が多く、治療の質を向上させるには、患者を特定の病院に集めて専門的な治療を行う「集約化」が必要であることが見て取れます。

データをどう活用?

それでは、私たちは今回公表されたデータをどう活用すればよいのでしょうか?。
書店には、さまざまな種類の「病院ランキング本」が平積みにされています。
これらの本が売れる背景には、患者の側に、治療法についての情報に強い不足感や不満感があることが挙げられます。
今回公表されたデータも、病院選びに使えそうですが、データを取りまとめた西本さんは注意が必要だとしています。

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「治療法の選択の背景には、さまざまな要因があり、主治医は患者に最も合った治療を実施していると思われる。さらに今回のデータは3年前のもので、現在では変わっている可能性もある。患者が、自分の受けている治療と一般的な治療がもし異なれば、その背景や事情を主治医や拠点病院にある相談支援センターに尋ねてほしい。そうすることで、コミュニケーションの向上にもつながるのではないか」と話しています。

このデータは、国立がん研究センターが運営している「がん情報サービス」(http://ganjoho.jp)で見ることができます。
「医療関係者の方へ」というところをクリックすると、「トピックス」のところに「がん診療連携拠点病院院内がん登録全国集計2009」という項目があります。
その中で「全国集計最新の報告書」の「施設別集計表」を見れば、それぞれの病院の治療内容を調べることができます。