東京電力と政府の原子力損害賠償支援機構が月内の策定を目指す総合特別事業計画の全容が22日分かった。最大の焦点だった政府が掌握する議決権比率は、一定の条件で3分の2以上を確保できることを明記。政府が東電を実質国有化し、経営権をほぼ掌握することで、組織再編など大胆な改革を政治主導で実施できる体制を整える。議決権比率は同日までの経済産業、財務両省首脳の協議で決着した。残る焦点は会長交代など新体制人事となる。
東電の議決権をめぐっては、経営権の実質移譲を嫌う東電や財政負担増を懸念する財務省が過半数取得に慎重だったが、経産省や支援機構は抜本改革には実質国有化が不可欠と主張した。
政府関係者によると、議決権比率は(1)議決権を持つ普通株で過半数の51%を取得する(2)東電の改革達成度など一定の条件下で議決権を持てるように転換できる非上場株(議決権はない)を十数%取得する--という。
当初政府が握る議決権は51%だが、コスト削減などの一定の目標値まで改革が進まない場合などには、政府が保有する非上場株を議決権が持てる普通株に転換などができる仕組み。その場合は議決権は3分の2以上に達する。51%の議決権で取締役選任など人事を掌握し、3分の2以上で合併など重要な決議を行使できる。
総合特別事業計画は、東電の財務基盤と資金繰りの強化が大きな柱になる。支援機構を通じた公的資金による1兆円規模の資本注入と金融機関からの1兆700億円の融資で原発停止に伴う燃料費の増加や原発事故の処理などで悪化した財務状況の改善を図る。
総合特別事業計画による東電改革は3段階で実施。最初の1年間で「火力発電・燃料調達」「送配電」「小売り」「コーポレート」の四つに分ける社内分社(カンパニー)制度を導入するほか、取締役の過半数を社外取締役とする委員会設置会社に移行。4月から企業向け電気料金を平均17%、7月から家庭向け料金を10%程度値上げする。
10年代半ばまでの第2段階では、燃料費増の負担を軽減するため、液化天然ガス(LNG)を他の電力会社やガス会社と共同で調達したり、施設の共同運用を進める。16年度からは社債発行を目指す。第3段階では、新興国の発電会社に対するコンサルティング事業などに参入。収益源の拡大を目指す。
ただ、計画は柏崎刈羽原発の再稼働を前提としており、地元の同意状況次第では電気料金の値幅などを変更する可能性もある。【野原大輔、和田憲二】
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■ことば
12年度以降の国による東京電力への賠償資金支援の前提となる計画。賠償の迅速・適切な実施の方策や経営合理化策などを記載する。事故を起こした原子力事業者が国に支援を求める際には特別事業計画を策定する。東電の例では昨年11月に「緊急」特別事業計画が認可されたが、本格的な改革は「総合」特別事業計画に先送りされた。
毎日新聞 2012年3月23日 東京朝刊
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