アジア金融拠点の香港、世界で最も大気汚染進んだ都市の課題
3月22日(ブルームバーグ):香港では、無認可でカモを飼うと5万香港ドル(約54万円)の罰金を科される場合がある。15年前に鳥インフルエンザ感染により初の死者が出たことを受けての措置だ。この額は、大量の排ガスを出す自動車を運転した場合に科される罰金の50倍に相当する。
香港のシンクタンク、シビック・エクスチェンジによると、香港では老朽化したバスやトラックの利用規制が不十分であることが大気汚染の主因となり、年間3000人以上が早死にしている。一方、世界保健機関(WHO)のデータによれば、鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルス感染による死者は1997年以降、世界で350人となっている。
WHO公衆衛生・環境局のコーディネーター、カルロス・ドラ氏は「大気汚染ががんや心臓疾患、呼吸器疾患の原因になり得ると、人々は通常認識していない。これらの疾患は極めて重大だ」と指摘。大気汚染に起因する世界の死者数は年間約130万人に上ると推計している。
香港の曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官は7年間の任期を終え、今年辞任する。香港は世界有数の株式市場を擁し、史上5位以内の規模の新規株式公開(IPO)のうち3件が実施された。ブルームバーグ・ランキングでは、世界で最もビジネスに適した場所に選ばれている。ただ、最も大気が汚染された金融拠点という意味でも群を抜いている。
WTOのデータや各都市当局のウェブサイトによると、ニューヨークやロンドン、東京、シンガポールの大気汚染は香港ほど進んでおらず、これらの都市は、より高い改善目標も掲げている。
投資家らは香港を中国の経済成長の代替地として利用しているが、中国の経済開放が進み資本規制が解除されれば、大気汚染が香港経済の成功の足かせとなる恐れがある。
米金融機関で勤務する香港在住のオーストラリア人バンカー、アレックス・ターンブル氏は5月にシンガポールに転居する計画だ。「明らかに大気汚染が原因で、私は香港から引っ越す予定だ。資本規制が解除されれば、香港は一体どうやって競争力を維持するのだろう。長期的に見て重要性が低下する恐れがある」との見方を示した。
原題:Hong Kong as Dirtiest Global Financial Center Is Tsang’sLegacy(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:Hong Kong Natasha Khan nkhan51@bloomberg.net
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更新日時: 2012/03/22 08:57 JST