仮想化でこれはできない? ・・・ VDI でコスト削減
VDI (Virtual Desktop Infrastracture) については、このブログでも何度かとりあげましたが、実際のところいくらかかるの? というのが気になるところかと思います。VDI に必要なライセンスは、なかなか分かり難いところがあります。
Windows Server 2008 R2 の Hyper-V および Remote Desktop Services(RDS) をベースとした Microsoft VDI と、VMware View のそれぞれで、仮想デスクトップへの 1 接続あたりの単価を勝手に試算してみました。価格はすべてざっくりとした参考価格です。どこかに見積りをとったわけではないので、あくまでも参考程度に読んでください。
Active Directory のインフラストラクチャーが既に構築済みであるとして、新たに Microsoft VDI のサーバーとクライアント デバイスを導入するという場合、少なくても以下のライセンスが必要になります。
Windows Server 2008 R2 Standard のサーバー ライセンスは、仮想化テクノロジである Hyper-V と、RDS のコンポーネントである RD 仮想化ホストを実行するサーバーと、RD 接続ブローカーをはじめとする RDS のその他のコンポーネントを実行するサーバーの数だけ必要です。RD 接続ブローカー他を仮想マシンで動かす場合は、Hyper-V ホストのライセンスでカバーできる場合があります。
Microsoft VDI は、認証基盤として Active Directory を使用します。Active Directory などの Windows Server の役割を利用する場合、ユーザー数またはデバイス数分だけの Windows Server 2008 R2 CAL が必要です。
Microsoft VDI は、RDS ベースであるため、RDS CAL が必要です。RDS CAL も、ユーザー数またはデバイス数分だけ必要です。RDS CAL が本当に必要なのか疑問に思うかもしれません。RDS CAL が必要なことは、以下のサイトで確認することができます。RDS CAL の代わりに、Microsoft VDI Suite ライセンスを利用することもできます。Microsoft VDI Premium Suite には RDS CAL が含まれます。Standard Suite には、Microsoft VDI の利用に限定された(お得な?) RDS CAL が含まれます。
Remote Desktop Services Client Access Licenses (RDS CALs)
http://technet.microsoft.com/en-us/library/cc753650.aspx
“Each device connecting to a Remote Desktop Services VDI deployment needs either an RDS CAL, a Microsoft VDI Standard Suite license, or a Microsoft VDI Premium Suite license.”
ちなみに、Windows Server 2008 R2 Service Pack 1 では、RD 仮想化ホストについてもライセンス サーバーの設定が求められるようになります。ライセンス サーバーを設定しない場合、RD セッション ホストと同じように評価モードで動作し、120日経過後に機能を停止します。
最後の Windows SA または Windows VDA は、仮想化ホスト上に Windows 7 Enterprise (またはダウングレード OS) をインストールして、クライアントから接続する権利を含みます。クライアントの Windows のボリューム ライセンスに SA (Windows 7 Enterprise へのアップグレード権) を追加すれば、VDI の仮想デスクトップに Windows 7 Enterprise をインストールして、最大 4 つの仮想インスタンスに同時接続できる権利が提供されます。Windows VDA は、Windows SA が付いていないデバイス (Windows のリテール製品やシンクライアント) に対して、Windows SA に含まれる VDI 権利相当を提供します。いずれも、3 年単位のサブスクリプション ライセンスです。
VMware View に必要なライセンスは、次のとおりです。VMware View Enterprise には、仮想デスクトップの実行に限定された VMware ESX/ESXi Server (VMware vSphere for Desktops)、VMware ESX/ESXi Server を管理するための VMware vCenter Server、仮想デスクトップのブローカー機能を提供する VMware View Manager を含みます。VMware View Premium には、VMware ThinApp などの拡張機能が含まれます。
Windows Server のサーバー ライセンスは、VMware vCenter および VMware View Manager を動作させる管理サーバーのためのものです。
VMware View においても、認証基盤として Active Directory が必要です。そのため、Windows Server 2008 CAL が必要です。
Windows SA または Windows VDA は、VDI を実現する製品に関係なく必要になります。Windows SA または Windows VDA を使用しない場合、仮想マシンごとに Windows OS ライセンスが必要となり、その費用は膨大になります (Microsoft VDI においても同様)。Windows SA または Windows VDA を使用しない実装は、考慮しなくてよいでしょう。
Active Directory の基盤が構築済みであるとして、物理サーバー 2 台とシンクライアント 100 台を導入し、100 ユーザーから仮想デスクトップ 100 インスタンスに接続する構成で試算してみましょう。
まずは、Microsoft VDI から。無理があるかもしれませんが、100 台の仮想マシンを 1 台の Hyper-V ホストで動かすとしましょう。動くかどうか別として、プロセッサ 8 基まで対応の Enterprise エディションにしておきます。RD 接続ブローカーをはじめとするその他の RDS コンポーネントは、Standard エディションのサーバーで構成するとします。それぞれ Windows Server 2008 CAL が付属するので、それを考慮して計算すると、次のようになります。
続いて、VMware View の場合です。
VMware View のほうが高くつきました。ただし、VMware View 4 Enterprise Bundle 100 Pack の価格2,400,000 円は標準価格ベースで計算してあるので、ちょっと不利。VMware View 4.5 発表時の 1 接続あたりの市場予想価格は18,000 円ということなので、Enterprise Bundle 100 Pack を 1,800,000 円として再計算すると、合計 3,715,000 円、1 仮想デスクトップあたり 37,150 円。Microsoft VDI と逆転しました。というか、ほとんど差は無くなりました。
計算に使用した価格は、価格比較サイトや製品発表時の参考価格などを寄せ集めたものです (特に、CAL の価格はざっくりとした信用できない価格です)。キャンペーン割引やボリューム割引などを利用できるはずなので、ライセンス コスト的にどちらが有利とは言えません。
仮想デスクトップの単価が高いか安いかと言えば、高いということになるでしょう。今回の荒試算には、ハードウェア コストが含まれていません。
シンクライアントを前提としましたが、一般的な企業向け PC よりは安いでしょうが、劇的に低価格な端末は多くはありません。仮想デスクトップはサーバーのリソースで動くので、クライアント デバイスに高いスペックは不要です。その分、サーバー側に積む必要があります。そして、PC 向けのハードディスクやメモリよりも、サーバー向けのハードディスクやメモリは一般的に高価です。仮想デスクトップの可用性を高めようとすれば、さらに追加的なコストがかかってきます。高速な SAN ストレージも必要でしょうし、ネットワークの再構築も必要かもしれません。
従来どおりのリッチ クライアントを導入するのと比較すると、仮想デスクトップはコスト高になるはずです。その意味では VDI でコスト削減はできません。VDI を導入しようとする目的と、その目的を VDI を使用しないで実装する場合とで比較しなければ、VDI でコストを削減できるかどうかは分からないということになります。そして、VDI のソフトウェアを提供するベンダーと VDI ソリューションをパッケージとして提供しようとしているベンダーさんは、ぜひとも 1 仮想デスクトップあたりの本当の単価 (“何とかは除く”のパターンはなしで) を提供してほしいです。いろいろと難しいこともあるでしょうけど。
(この投稿の冒頭のイメージは、グラフィックス カードの VDI、いや DVI (Digital Visual Interface) 端子でした)