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【社会】

原発オフサイトセンター 10キロ圏外、今も地図なし

2012年3月22日 06時58分

 原発事故の際、現地の対策拠点として全国に十六カ所あるオフサイトセンター(OFC)に、いまだに十キロ圏外の詳しい地図が用意されていない。東京電力福島第一原発の事故では、発生翌日、避難地区が一気に二十キロ圏にまで拡大し、地図がなかったため、避難すべき住民を確定させるのに手間取った。OFCをめぐっては、原発にあまりにも近い立地など抜本的に見直す必要があるが、事故から一年たっても、地図の備えすら改善されていない。

 「『地図がない』と騒然となった。そのうち誰かがどこからか探してきて、地図に線を引き始めた」。1号機原子炉建屋が水素爆発し、避難区域が十キロ圏から二十キロ圏に広がった昨年三月十二日に福島のOFCにいた経済産業省原子力安全・保安院の黒木慎一審議官は、当時の状況をこう語る。

 現行制度では、原発から半径八〜十キロを防災対策重点区域(EPZ)に指定し、事前に避難計画などを定めておくことになっている。

 しかし、現実の原発事故の影響は想定よりずっと大きかった。二十キロ圏への避難拡大を市町村に指示しようとしても、避難計画があるのも詳しい地図があるのも十キロ圏内のみ。地図がないため、正確に地区割りができずに手間取った。

 政府の事故調査・検証委員会の中間報告でも「住民避難の担当者は避難区域が特定できず、市町村の問い合わせにはっきり答えられなかった」と厳しく指摘している。

 教訓を踏まえ、原子力安全委員会の専門部会は、半径五キロ圏を重大事故時に住民が直ちに避難する予防防護措置区域(PAZ)に、三十キロ圏を放射線量の高まりに応じ避難する緊急防護措置区域(UPZ)に指定する案を決めた。

 区域の拡大をめぐっては、六年前、保安院が安全委に圧力をかけて拡大を見送った経緯がある。

 ただ、地図の不備を解消しようとする動きは鈍い。本紙の取材に対し、保安院の担当者は「個別には調べていないが、EPZ外の地図はない」と話す。

 新たな防災指針が正式決定されていないことを理由に挙げ、「議論を見極め、どの範囲の地図を用意するか決めたい」と話した。

 国内で現在、稼働している原発は二基だけだが、停止中でも冷却が止まるなどすれば、福島第一の4号機のように重大事故が起きる可能性はある。

(東京新聞)

 

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