RKB毎日放送

今、審議されている来年度の福岡市の予算案の1割以上が、「生活保護費」にあてられていますが、多くの自治体で生活保護の受給者が増えています。

増え続ける生活保護の現状と対策について、きょうとあすの2回にわたってお伝えします。

きょうは、生活保護の現状と行政のジレンマについてお伝えします。

まだ、業務が始まらない博多区役所に朝から多くの人が列をなします。

この日は、保護費の支給日。

毎月1日、区役所は生活保護の受給者で混雑します。

●博多区役所保護第一課・甲斐邦夫課長
「ほとんどの方はそれぞれの金融機関の口座に振り込んでいるんですけども、事務所払いを希望される方とかおられますから」

中には、夫婦とみられる若い男女の姿もありました。

福岡市の来年度予算案のうち、保護費は783億円で、予算全体に占める割合は10.2パーセントと、政令指定都市になって初めて10パーセントを超えました。

このうち、4分の3は国が補てんしますが、それでも、自治体にとって見過ごせる負担ではありません。

●福岡市・渡辺正光副市長
「100億の事業費があれば、お金があれば、どれだけの事業ができるかと。政令市になって整備してきたような施設が、どんどん、どんどん老朽化して建て替えをしていかないといけない。あるいは、工事をするにも手を入れていかないといけない。そういう時代に来ていますので、そういう面では非常に財政的には厳しいと」

福岡市の場合、生活保護費は1人住まいだと、およそ12万円。

両親に幼児1人の場合は、およそ21万円支給される計算となります。

医療費は自治体が負担するため、かかりません。

ひと昔前までは所持することが認められなかった携帯電話やエアコンを持つことができ、場合によっては、車の所有も許されています。

「生活保護費が手厚い」「もっと減らすべきだ」という批判もありますが、無理に減らそうとして悲劇を招くこともあります。

●北九州市・北橋健治市長
「市長って孤独だなと思いました…」

「おにぎりが食べたい」、そう書き残し、生活保護を打ち切られた男性が餓死した北九州市。

生活保護を減らそうとしたため、申請の受け付けさえ拒んだとして、この時の生活保護行政は、「闇の北九州方式」とやゆされました。

生活保護行政の見直しを公約に掲げて当選した北橋市長は、検証委員会を立ち上げ、数値目標を死守しようとする職員の意識改革に取り組みました。

●北橋健治市長
「北九州市の福祉行政全体が、社会全体から大変厳しく指弾されていたころだったんですね。しっかりと改善しないと、どんな努力を積んでも、やっぱりずっと負のイメージがついて回るだろうと」

北橋市長の就任後、生活保護の受給者数は10ポイントも増え、これに比例するように、小倉北区役所の保護課の職員は2倍に膨れ上がっています。

●小倉北区保護第一課・横山司課長
Qずいぶん広いですね?
「そうですね。全部で現在は102人ですね。ケースワーカーだけで10係になります。北九州市は7区ありますけども、小倉北区を担当しております」

国の制度とは言え、生活保護受給者と向き合う職員の人件費は、自治体の負担です。

生活保護行政を正常に戻したとの想いとは逆に、「ばらまき行政」との批判が、北橋市長の胸に突き刺さります。

●北橋健治市長
「中には働ける人もいるようだと。パチンコに行っている人もいると。税金の無駄遣いじゃないかと。北橋は甘くしすぎたんじゃないかと。自立支援だとか不正受給を排除するために、今の北九州市の職員は一生懸命頑張っていると」

命をつなぐ生活保護の充実と、そこにつぎ込まれる税金。

「バランス」のひと言で片づけられない問題だけに、行政にとっては悩ましい課題です。

●坂田キャスター
「あすは、生活保護受給者を減らすための取り組みについてお伝えします」