2012年1月24日 20時54分 更新:1月24日 21時44分
東京電力福島第1原発事故で警戒区域と緊急時避難準備区域(昨年9月解除)に指定された福島県川内村が31日、避難生活を続ける村民に帰村を呼び掛ける「帰還宣言」をすることが分かった。同事故で避難区域に指定された自治体の帰還宣言は初めて。3月末までの全員帰村を目指し除染作業を進め、4月からは役場や学校も再開するという。ただ、村民からは帰村に慎重な声も聞かれ、村復活の道のりは険しそうだ。
同村は原発事故直後に村民約3000人が全村避難し、緊急時避難準備区域の解除後も村に戻ったのは200人弱。残りは現在も8割が郡山市など県内に、2割が県外で避難生活を送っている。
村は今月開いた住民懇談会で、除染や雇用確保について説明し「ある程度の理解が得られた」(村幹部)として帰村の呼び掛けを決めた。今後、村議会などと協議し、佐藤雄平知事に報告する。
帰村に向けた計画では、旧緊急時避難準備区域内の約940世帯のうち約600世帯の除染を3月末を目標に完了させる。残りは年内をめどにするが、いずれも空間線量が毎時1マイクロシーベルトを下回っており居住に問題はないという。警戒区域の約160世帯には、村内に仮設住宅を造って帰れるようにする。村内に一つずつある保育所、小中学校の除染も2月中に完了させ、役場などの行政機関や村営診療所とともに4月から再開。隣接する田村市と小野町とのバス路線を確保し、村内の小売店の再開も財政支援するという。
除染作業で1000人規模の雇用を確保し、来年度に金型工場や野菜栽培施設を誘致する計画だ。
ただ、避難中の村民からは慎重な意見も出る。旧緊急時避難準備区域に自宅があり、妻と郡山市の仮設住宅で避難生活を送る農業、榊元(さかきもと)新一さん(71)は「村役場などが機能しても、車がないので隣町まで買い物に行けない。いずれは帰りたいが、田んぼも使えず収入源もない」と話す。警戒区域内に自宅がある自営業の男性(36)は「早すぎる」と批判。最も気がかりなのは原発だ。「とても収束したとは言えない。大きな地震が来て、また何かあったらどうするのか。当分は無理だろうという結論です」【乾達、日下部聡、宗岡敬介】
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