「ニュースを斬る」

鳩山由紀夫、蓄電池と普天間を語る

「我々は正義の味方だ」

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2012年3月22日(木)

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官僚主導に後戻り

 鳩山氏が率いる蓄電池議連は、再生可能エネルギーの導入や地球温暖化問題だけでなく産業育成の観点からも蓄電池に注目している。

 蓄電池議連が焦点を当てている技術がリチウムイオン電池です。現状、発電所で使えるような大容量のリチウムイオン電池は存在しないと聞いています。また、大容量化した時に、どういう現象が起きるか、必ずしも実証できていない面もある。ニッケル水素電池やナトリウム・硫黄電池などを否定するものでもありません。ただ、いずれにしても、国策的に蓄電池の普及を進める必要がある。

 日本が圧倒的に強かった半導体や液晶は韓国や台湾勢にやられました。高いシェアを誇っていた(ノートパソコン用などの)民生用リチウムイオン電池も韓国や中国が急速にシェアを伸ばしています。今後、勝てる可能性がある最後の領域が、大型の定置型リチウムイオン電池ではないでしょうか。ここに力を入れて産業を育成していかないと。

 蓄電池議連としては、今後2〜3年が勝負だと考えています。この間に、どれだけ実用段階まで持っていけるか。2011年度第3次補正予算や2012年度予算案で蓄電池に関連する予算が確保されました。今後は再生可能エネルギーの特定供給者に対して大規模定置型蓄電池による安定化を義務づけたり、補助金を与えて促進したり、といった流れを作る提言を出していくつもりです。利権あさりのように思われるかもしれませんが、そういう考えはまったくありません。我々は「正義の味方」ですよ。

 経済産業省は1月6日に「蓄電池戦略プロジェクトチーム」を設置し、蓄電池を活用した電力需給の負荷平準化や産業競争力の強化などの議論を始めた。だが、「どうもスピード感がない」(蓄電池議連の辻恵・幹事長)と議連は官僚の姿勢に疑問を抱く。事実、鳩山氏の話も、現状の永田町や官僚機構に対する不満へと移っていった。

 そういう(行き詰まった)時に、風穴を開けるのが政治なんですよ。逆に言えば、我々の力不足かもしれません。もう1つは(官僚に)理屈で勝たないと。実証実験を重ねて、結果を出していかないと進まないという面はありますので。そういった難しさはありますね。

 すべての政策において、政局で政治の意志決定が遅れることは官僚にとってありがたい話。政治が政局でもたもたしているうちに、官僚主導の政策決定に戻ってしまう。こういうテーマこそ政治主導で動かないと。(ざわついた政治の影響で)蓄電池の普及が遅れる可能性は十分にある。そこには注意しなければいけません。話し合い解散? そんなのはあり得ないですよ。

 鳩山政権を自分なりに振り返れば、最初のうちは官僚も「新政権だからお手並み拝見、協力するところは協力しよう」という気持ちだったと思います。ただ、私の知らないところで、徐々に官僚が力を持っていったという感じがしますね。普天間移設の時も、官僚は米国の方を見てやっていた。そこに、自分の力が及ばなかった。

 官僚の抵抗が大きくなったきっかけは事務次官会議の廃止じゃないでしょうか。私は担当閣僚が閣僚会議で意志決定し、役人を排除しながら物ごとを決めようとしました。実際、地球温暖化問題などいくつの問題はこの仕組みでやり通しました。ただ、こういった動きに対して、「このままいくとえらいことになるぞ」と。それが、官僚たちを結束させてしまったのではないでしょうか。

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著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。



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