「ニュースを斬る」

鳩山由紀夫、蓄電池と普天間を語る

「我々は正義の味方だ」

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2012年3月22日(木)

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 原発事故後、脚光を浴びる再生可能エネルギー。その動きと軌を一にして、蓄電池の重要性も認識されつつある。太陽光や風力などの自然エネルギーは日照や風向きで発電量にばらつきが出る。こういった不安定な発電が送電線網に与える影響も無視できない。

 だが、大規模な定置型蓄電池を設置して電力をためることで、この問題は解決できる。現在も課題になっている昼間と夜間の需給ギャップを平準化することも可能だ。現状ではコスト高を指摘されているが、今後のエネルギー問題を考えれば、蓄電池はカギを握る存在と言える。

 そのことに、国会議員も気づき始めた。

 民主党の一部議員は昨年7月、「蓄電池の普及および蓄電社会システム産業の国策的振興を目指す議員連盟」を設立、定置型蓄電池の普及に向けた勉強会を進めている。3月12日、蓄電池議連の会長を務める鳩山由紀夫・元首相に、大阪府堺市から伊丹空港に向かう車中で構想を聞いた。

(聞き手は篠原 匡)

 福島第1原子力発電所の原発事故の結果、「原子力発電は必要だが、過度に依存した状況は抜け出さなければならない」と感じている方々が増えています。どのようなエネルギーでまかなうのかは、まさに議論が起きているところですが、再生可能エネルギーを迅速に発展させ、実用化していくことは言うまでもないことだと理解しています。

 私は先日、博多湾で九州大学や福岡市が進めている浮体式海上風力発電の実証実験を視察しました。海上に浮かぶ風車は直径3メートルほどの小さなものですが、従来の3倍の電力を発電できるといいます。既存の風力発電と比べて音も小さい。様々な研究者が自然エネルギーに力を入れているな、と嬉しく感じました。

 ただ、多くの再生可能エネルギーに言えることですが、その瞬間の状況によって発電量が大きく変化してしまう。太陽光も風力も、その場の環境に左右されるので、質の高いエネルギーに変える必要があります。その時に、いかにして電力を蓄えるか、本当に必要な時にどう取りだして使うか。その課題を解くカギが蓄電池なんです。日本だけでなく、世界を救う技術になると信じております。

 私は地球温暖化ガスを2020年までに1990年比で25%削減すると提唱しました。この目標を実現するために、2030年までに原子力発電の比率を5割まで増やす必要があった。ところが、現実を見れば、原子力を5割にすることなど不可能です。

 応急措置としての天然ガスと石油を使うことは仕方がないとしても、地球温暖化ガスの削減には挑戦しなければならず、将来的には再生可能エネルギーに頼らざるを得ない。そのためには、コミュニティー単位で「地産地消」的な蓄電社会を築き上げるべきではないでしょうか。それが、日本という国を強靱にすると考えます。

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著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。



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