前回の要点は次の二点です。
以上が今回の著作権法改定案の「アクセスコントロール回避規制」の意図していたことであろう主作用です。今回は、パブコメへの応募意見 [URI] で書いた内容の繰り返しになりますが、「アクセスコントロール回避規制」の副作用について考えてみます。
今回の著作権法改定案で違法とされるのは「著作権等の侵害の防止手段としての暗号を復号した私的複製(ただし刑事罰なし)」と「著作権等の侵害の防止手段としての暗号を復号して、著作権等の侵害を可能にする装置・プログラムの提供等(3年以下の懲役・300万円以下の罰金 [併科可能])」の二つです。
著作権法には「私的複製」以外にも複製権を制限する条項があり、例えば「第31条 図書館等における複製」、「第32条 引用」、「第33条 教科用図書等への複製」、「第35条 学校教育機関における複製」、「第37条 視覚障碍者のための複製」「第37条の2 聴覚障碍者のための複製」「第42条 裁判手続き等における複製」、「第47条の3 プログラムの著作物の複製物の所有者による複製」、「第47条の4 保守・修理のための一時的複製」等があります。
今回違法とされる複製は「私的複製」のみですので、当然ながらその他の権利制限規定で認められる複製の場合は、技術的制限手段を回避して複製を行っても合法です。「図書館等での複製」・「引用」・「学校教育機関における複製」・「視覚・聴覚障碍者のための複製」といった複製であれば、著作権者の許諾を得られない状況でも「複製」を認めた方が「文化の発展に寄与する」と考えられているが為に、著作権法では「権利制限規定」として著作者等の権利を制限しているものです。
しかし、「回避装置」の提供等は刑事罰対象となっています。「回避装置」を入手できない方々はこれらの権利制限規定に沿った利用をすることはできません。
パブコメ後の著作権分科会報告書 [公式 PDF] では「障害者への情報アクセスの確保」という文言が入った (報告書 88 ページ) ので、少しは改定案にもその趣旨が反映されているかと思ったのですが……欠片も見当たりませんね。
権利者の皆さま方、おめでとうございます。あなた方は、今、著作権法の権利制限規定を回避する手段を手に入れようとしています。
DRM を掛けましょう。権利制限規定に沿った公正な利用を求められても、断りましょう。公正な利用を求める人々に回避装置を提供する者がいたら、警察に訴えましょう。
著作者の利益が守られる、素晴らしい未来が手に入りますね。日本の文化はさぞや発展していくことでしょう。
永山 祐二 文化庁 著作権課長、壹貫田 剛史 文化庁 著作権課長補佐、土肥 一史 日本大学大学院教授/文化庁 著作権分科会長&技術的保護手段 WT 座長/知財本部 インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する WG 座長 に感謝の念を捧げましょう。
少し過剰に煽りました。反省します。
反省しました。これだけで終わるとフェアでないように思えるので、補足しておきます。例えば、電子書籍に DRM が掛っている場合、「第31条 図書館等での複製」は不可能になるのか心配される方もいるかもしれません。
今回の著作権法改定案で追加される技術的保護手段は「影像・音声」の暗号化です。「文章」の暗号化ではありません。「電子書籍の版面は影像だ!」と主張される可能性がないとは言い切れませんが、当面の間は、図書館等が「電子書籍等の DRM を回避した複製装置」を国内から入手することが法律上は可能なように思えます。あくまでも、当面の間は。
[過去の戯言]