原発事故で仮住まいを余儀なくされるなど不自由な暮らしを強いられている福島県の中学生たちが17日、栃木県那須町高久乙のセミナーハウスで合宿を行った。東京や神奈川の大学生を中心とするグループが将来の夢をつかむきっかけにしてもらおうと主催した。福島市やいわき市などから参加した37人の生徒たちは、スポーツで存分に体を動かしたり、思いのたけを語り合ったりした。
きっかけは昨年8月、一橋大社会学部4年の土屋友美賀(ゆみか)さん(23)が福島市などの仮設住宅を訪れた際、「勉強しても仕方ない」という子どもたちの声を聞いたことだ。親や教師との対話がないことにも気づいた土屋さんは「子どもたちが思っていることを言える場を提供したい」と合宿を企画した。
合宿には土屋さんの仲間の大学生15人も参加。阪神大震災の被災者や白血病を克服した大学生を招き、話を聞かせる時間も設けた。「大変な状況を自分でも打破できるということと、目標を持つ生き方を学んで欲しい」という狙いだ。
中学生たちはグループに分かれて、自分が将来やりたいと思うことや、そのために今の自分には何があって何が足りないのかなどを真剣に話し合った。大学生らは中学生の話に耳を傾け、一緒に考えた。
参加者の1人、中学3年の今泉直哉君(15)の家は浪江町にあり、現在は福島市内の仮設住宅で暮らしている。「親に言えなかった夢をここで話しました。みんなと語ることで、視野も広がります」。目標は調理師だ。「有名になって、地元の食材で料理して、福島は安全だということをアピールしたい」と語った。(緒方雄大)