<「反対派は文句を言いたいだけ」「党内の声なき声を尊重すべき>
「事前審査に来ている反対派は、文句を言いたいだけ。党内で黙っている300人は逆の立場だ。サイレント・マジョリティー(物言わぬ多数派)の意見を尊重しなければいけない」――増税反対派が頭から湯気を出して怒り出すのは確実だ。民主党の重鎮として増税推進を振りかざす大幹部が、信じがたい暴言を吐いた。増税法案をめぐって連日、深夜まで長時間の議論を重ねる中、「審査に来ない議員の意見が大事」なんて、党内手続きを全面否定したのと同じ。民主主義のルールからも逸脱している。
問題発言が飛び出したのは16日の深夜。約5時間半にわたる議論の末、決着が祝日明けの21日以降に持ち越された直後だった。
衆院第2議員会館の会議室に群がった大勢の「番記者」の前で、大幹部はオフレコを条件にペラペラ語り出した。
「事前審査に来た議員が100人としても、党内にはまだ300人のサイレント・マジョリティーがいる。本当は彼らの声なき声を尊重しなければいけない。(一体改革の)大綱から(内容を)後退させたらサイレント・マジョリティーは怒りますよ」
ガチンコ議論を終えた直後でも、大幹部の認識はこの程度。本気で反対派の意見に耳を傾ける気は、さらさらない。
発言の主は財務省出身で、ガチガチの財政規律重視派として知られる。最近は、自分が野田首相の後見役であることを強調し、野田の悲願達成のため、反対派の意見を抑え込もうと必死だ。酒好きでも知られるが、議論の後に一杯ひっかけたわけではあるまい。シラフだからこそ、なおさら問題なのだ。
14日の事前審査開始から3日連続、計15時間以上に及んだ増税論議は何だったのか。
「この発言が執行部の総意だとしたら許せません。そもそも事前審査に参加条件はないのです。増税への賛否を問わず、意見のある議員はいつでも発言できます。それなのに参加しない議員の意見まで忖度(そんたく)して重視するなら、何のために議論を重ねているのか。党内手続きを愚弄しています。形ばかりの“ガス抜き”で増税を強行するのなら、党内民主主義を踏みにじる暴挙です」(ある反対派議員)
いくらオフレコとはいえ、大幹部の暴言を1行も報じない大マスコミもどうかしている。国民の意見はそっちのけで着々と進む増税への道。そろそろ本気で国民も怒らないと、取り返しのつかないことになる。
(日刊ゲンダイ2012年3月19日掲載)