「事務処理能力も低い」
「話していると面白いところもあるが、実際の仕事では使えない」
『理系バカと文系バカ』の著書がある、サイエンスライターの竹内薫氏が言う。自身も東大理学部出身だ。
「今の時代、技術者も外回りの必要があり、製品やシステムを売る際には営業と一緒に顧客に会います。その時、相手との会話についていけなかったり、顧客の要望がよくつかめなかったりすると通用しません。でも、それこそが理系出身者の苦手な部分なんです。同根の問題として、マイスター(親方)制度が確立したドイツなどと比べ、日本は物づくりの現場を統率できるエンジニアが決定的に不足しています」
この1年、東証一部上場企業で誕生した新社長の出身で見ても、文系142名、理系73名と、歴然とした差がついている。大会社の社長は圧倒的に文系だ。
Aさんも言う。
「もちろん自分のコミュニケーション能力に問題があることも自覚しています。なかでも欠けているのは、『駆け引きする力』。ウソも方便とか、貸し借りで仕事するとか、そういうことがまったくできない。
あと、他人の噂話とかにまったく興味がなくて。飲み会に参加しても、周囲を喜ばせるような話ができません。物理の話ならできるんですが・・・・・・」
理系の人間は理不尽な上司に出会った時、なんとかアジャストして乗り越えようとは思わない。
「この人はヘンなことを言う種類の人間だ」
と、いたって冷静に聞き流している。その態度が文系の原始人上司の目には、
「アイツには何を言っても馬耳東風」
と映るわけだ。
現実の会社では、経営幹部の立場にいるのはほとんど文系出身者だから、よほど処世術に長けた奇特な理系社員でない限り、引き上げられることは少ない。
「理系出身者の誰もが研究室に残れるわけじゃない。そして企業に入って、研究者として特許を取って会社に利益をもたらすような人もごくわずかです。大半の理系学生は研究者になれないのですから、『歴史も哲学も時事問題も知らない』では済まされないはずなんです。ところが、彼らは大学で文系科目をろくに学んでいない。教養課程のカリキュラムを自由に組めるようになった'91年以降、理系学部の教養軽視がどんどん進んでいるからです」(竹内氏)
一方で、理系学生の大学生活は、文系とは比べものにならないほど勤勉で忙しい。毎日実験があり、授業をサボるという概念もない。サボると即落第してしまうからだ。
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