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【コラム 私は見た!】

一縷の希望につながる場所

2012年3月22日

 土俵上で、これ以上生々しい口惜しさを見せる力士は少ないだろう。しばらくは把瑠都の顔から顔色がうせたままだった。

 そこまでのこの大関の今場所の戦いぶりに、十一日目の深い失望感を見せてしまうまで、端から見て、客観的にはこう見えるとか、こうに違いないと推測を働かせてみるとか、間接的なもの以外に近づく方法がなかったのである。

 そんな把瑠都の表情が一挙に崩れて、十一日目の敗北の後には、一気に口惜しさを持て余した力士の、正直きわまるものが、顔を見せたといっても良いだろう。

 聞いてみたいことは決して少なくはない。先場所の千秋楽の一敗と、今場所の四日目の一敗とを、自分の内面ではどう処理しているのか。一敗後の六日間をどう内面で消化して、来るべき戦いに結びつけているのか。

 十一日目の敗北の深い失望感が深ければ深いほど、十一日目の感情の一種の爆発まで、秘めてきたものは奥深いものだったと思える。

 それが、琴欧洲戦の後のあの見るも無残な失望ぶりになったと思えるのだが、これほど正直に自分の内面を出してしまって、残る四日間の戦いに支障は出ないものかどうか。

 不用意に感情の露出を止め得なかっただけに把瑠都は遠慮無くいえば、必要もないのに、楽屋を見せてしまったように私には思えるのだ。

 それにつけても、十一日目の敗北までの陽気で、勝負に一気に走る把瑠都の相撲は魅力に富んだものだった。十一日目の失望ぶりから立ち直るのは大変だと思うがお世辞ではなしに、まだ絶望的状況ではないと考えている人も、決して少なくはない。

 今場所だけでも、場所はまだ四日残っている。自力で回復することさえ不可能ではない。

 今場所は相撲の内容がずばぬけてとびぬけて良かっただけではなく、十一日目でまだ上位争いが熾烈に展開されている。客の入りも常の場所より良かったようだし、一縷の希望につながった場所だったといえようか。 (作家)

 

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