白鵬(右)を寄り切りで破る鶴竜(左)=大阪府立体育会館で
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◇春場所<9日目>
関脇鶴竜(26)=井筒=が横綱白鵬(27)=宮城野=に土をつけ、勝ちっ放しはいなくなった。白鵬、綱とりに挑む把瑠都(27)=尾上=、鶴竜、前頭翔天狼の4人が1敗で並んだ。鶴竜は頭を付けたうまい相撲で白鵬を寄り切った。日馬富士、琴奨菊、前頭高安が2敗で追う。旭天鵬は通算出場1565回で水戸泉を抜いて歴代単独8位。
鶴竜はかつてこう話したことがある。「モンゴルではDNAが大事だと言われてます。DNAが入ってないと強くならないと」。白鵬の父ムンフバトさんはモンゴル相撲で5年連続6回の優勝を誇る大横綱。鶴竜の父マンガラジャラブさんは国立大学の学部長だ。
確かに戦いのDNAはないかもしれない。それでも「何でそうじゃないと強くなれないのか。納得できない。人間の努力しだいですよね。才能やいろいろなものが積み重なって、上にいける人間ができてくる」。格闘家の家系ではなかったが、鶴竜は努力する才能を持っていた。
大関昇進には最低でも12勝が必要とされる今場所。全勝の横綱を53秒5の熱戦で止めたこの白星には計り知れない価値がある。しかも、白鵬戦の連敗を20で止めた先場所に続く勝利。「今までとはちょっと違ったと思います。いいイメージが頭にできていました。いやもう、うれしいです。ほんとに」。そのDNAは努力によって変化を遂げていた。
将来は「マイケル・ジョーダンのようなバスケ選手になること」を夢見ていた少年は、モンゴルで放送される日本の相撲中継を見て入門を決意した。スカウトされたわけではないので、日本の相撲雑誌などに自ら手紙を送った、いわゆる“志願兵”だった。新弟子検査では180センチで82キロ。細身の体に師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)も心配したが、それも昔のこと。
1敗目を喫した前夜は焼き肉を食べに出かけて気分転換した。今や148キロと立派な体に成長した鶴竜。横綱の白鵬を2場所連続で破った関脇以下の力士はこれまで日馬富士、稀勢の里、琴奨菊の3人だけ。3人とも大関に昇進している。鶴竜で4人目。データも鶴竜の背中を押している。
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